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保育園の園庭に、芝を張りプランターを設置すると、園児の免疫系が改善した

2020年10月29日(木)17時30分
松岡由希子

保育園の園庭を変えると、園児の免疫系が変化した...... Sasiistock -iStock

<フィンランドで行われた研究で、保育園の園庭に、小さな森をつくり、芝を張り、プランターを設置したところ、園児の腸内細菌叢がより多様になったことがわかった......>

緑が多く、生物多様性の高い屋外環境で子どもを遊ばせると、子どもの免疫系を改善したことが、北欧フィンランドの保育園児を対象とする実験で初めて明らかとなった。

衛生環境が過度に高いと、免疫系障害のリスクが高まる......

衛生環境が過度に高く、日常的に自然と触れ合う機会に乏しい都市部の生活では、器官系の微生物の多様性が損なわれ、アトピーや糖尿病、アレルギー、セリアック病など、免疫系障害のリスクが高まると考えられている。

これまでに、田園地帯で育った子どもは喘息にかかりづらく、「幼少期に緑豊かな環境に触れることと免疫系が良好に機能することとの間には何らかの関連がある」ことも示されているが、今回の実験結果は、これらを裏付ける結果として注目されている。一連の研究成果は、2020年10月14日に学術雑誌「サイエンスアドバンシズ」で発表された。

植物を移植して小さな森をつくり、芝を張り、プランターを設置

フィンランド自然資源研究所(Luke)やヘルシンキ大学らの研究チームは、2016年5月から6月までの28日間、フィンランド南部ラハティと南西部タンペレの2都市の保育園計10カ所に通園する3歳から5歳までの園児75名を対象に実験を行った。

研究チームは、4カ所の保育園の園庭に介入。砂利が敷かれた園庭にブルーベリー、クローベリー、コケなど、フィンランドで広く自生する植物を移植して小さな森をつくり、芝を張り、プランターを設置した。

これらの保育園に通う園児計36名は、週5日にわたって1日平均90分間、植物を植えたり、天然材料で工作をしたり、緑の中でゲームをしたり、園庭で木や土に触れて遊んだ。また、他3カ所の保育園では、園児計23名を毎日、近隣の森に連れて行き、自然に触れさせた。

研究チームは、実験期間終了後、園児の皮膚細菌叢、腸内細菌叢、血液を調べた。その結果、森のある園庭で遊んだ園児は、皮膚の生体防御を強化する真正細菌「ガンマプロテオバクテリア」が増えた。

また、血液中では、細胞間相互作用に関与する生理活性物質(サイトカイン)のうち、炎症を抑制する働きを持つ抗炎症性サイトカイン「TGF-β1」のレベルが増加した一方、自己免疫疾患に関与する「インターロイキン(IL)-17A」が減少した。また、森のある園庭で遊んだ園児と、近隣の森に毎日連れていってもらった園児はともに腸内細菌叢がより多様で、よく似ていた。

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保育園の庭に、芝を張り、プランターをおいた例 (ヘルシンキ大学)

『自然との触れ合いが免疫系障害を防ぐ』を裏付け

研究論文の責任著者でフィンランド自然資源研究所のアキ・シンコネン研究員は「この実験結果は『自然との触れ合いが免疫系障害を防ぐ』との説を裏付けている」とし、「すべての保育園の園庭を緑豊かなものに変えるべきだ」と説いている。

また、共同著者でタンペレ大学のウイルス学者ヘイッキ・ヒョテイ教授は、一連の研究成果について「免疫系障害の予防に向けて新たな可能性をひらくものだ。さらなる研究にすでに着手している」と述べている。

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