ゲーム史の追憶番組『ハイスコア:ゲーム黄金時代』が残念な理由
An “Easy Mode” Documentary
『ファイナルファンタジー』を手がけた天野(左上)や『パックマン』の生みの親の岩谷徹(右下)ら名作ゲームに関わった人々が次々に登場する NETFLIX
<ビデオゲームの草創期を描くネットフリックスの『ハイスコア』は見どころは多いものの業界関係者の逸話の寄せ集めに終わっている>
ネットフリックスの新作『ハイスコア:ゲーム黄金時代』(全6話)は、ビデオゲームの草創期の歴史に焦点を当てたドキュメンタリーだ。ゲーム業界の魅力的な人々や、チカチカ光るゲームセンターのゲーム機、楽しいドット絵のアニメーションや美しい映像が代わる代わる登場する。
1980年代から90年代にかけてのゲームへのノスタルジーに満ちている作品で、見ているといい気分になってくる。だが視聴者の思い込みを覆すような内容や、ゲームへの理解を深めようとする姿勢には欠けている。
人物を中心に描いているせいで、ゲーム史の中の特定の時代を語るというよりは、その時代に活躍した業界関係者の逸話の寄せ集めになっている。逸話と逸話をつなぐのは、マリオの声でおなじみのチャールズ・マーティネーのナレーションだ。
それがうまくいった回もある。第3話「ロールプレイング」で取り上げられるのはゲーム通ならば納得の顔触れだ。
80年代初頭にグラフィックを用いたアドベンチャーゲームを作り出した先駆者で、『キングス・クエスト』の生みの親であるロベルタ・ウィリアムズと夫のケン。81年に発売されたオープンワールド型ロールプレイングゲーム『ウルティマ』を手掛けたリチャード・ギャリオットも登場する。『ファイナルファンタジー』のキャラクターデザインを手掛けたイラストレーターの天野喜孝のスタジオを訪問するといった、やや想定外の「寄り道」もある。
影響の連鎖を取り上げず
性的少数派に光を当てたゲームとしては先駆的存在である92年の『ゲイブレード』の開発者、ライアン・べストにも光を当てる。「ダンジョンに住む嫌らしい右翼の怪物からネルダ皇后を救い出す」というアドベンチャーゲームで、当時、同性愛者を攻撃していた政治家のパット・ブキャナンを連想させるキャラクターがラスボスだ。ゲーム草創期を担ったパイオニアたちの多様性に思いをはせるきっかけになるかもしれない。
だが、このジャンルの歴史の解説としては、まさに継ぎはぎの印象だ。『ウルティマ』とギャリオットばかりにスポットライトを当て、同じ年に出て、同じくらい重要な『ウィザードリィ』は脇に追いやられている。