外国人の「コロナ解雇」で仕送りの途絶えた出身国に大不況が伝播する
The Fear of Reverse Migration
新型コロナによる移動制限で経済環境が急変した上に、記録的な原油安が重なった結果、ぺルシャ湾岸諸国の失業率は13%に上昇する見通しだ。その最大の痛みを被るのは出稼ぎ労働者になるだろう。これらの国では、一般国民の多くは、雇用の安定している公共部門で働いているからだ。
調査会社オックスフォード・エコノミクスのチーフエコノミストであるスコット・リバーモアは、最近のリポートで、アラブ首長国連邦(UAE)では90万人の雇用が失われ、このうち83万5000人を外国人労働者が占めるとの見通しを示している。また、サウジアラビアでは、出稼ぎ労働者150万人が失業する恐れがあるという。
クビになるのは肉体労働者だけではないと、湾岸諸国の人権NGOマイグラント・ライツ・オルグのエディターであるリマ・カラッシュは言う。
「あらゆる職種の出稼ぎ労働者が打撃を受けている。それなのに政府の救済策の対象にほとんどなっていない」
エミレーツ航空でも解雇
ミレーツ航空は、UAEを世界の空のハブにした。しかし、現在は運休・減便が相次ぎ、コスト削減のため数千人の一時解雇に踏み切った。
インド出身のある客室乗務員(今後の雇用に響くことを案じて匿名で取材に応じた)は一児の父親だ。ドバイの自宅の家賃に加えて、インド中部の故郷では、退職した両親と身体障害のある妹が毎月の送金を待っている。
「エミレーツはグローバルな営利企業だ。私たちは会社の利益のために働いてきた。それなのに解雇された。残酷だ」。勤続 14年になる彼は、あっさり解雇されたことに落胆していた。「多くの人が私と同じ思いだ。ホテルで働いている友人たちも、仕事を失うかもしれないと心配している。既に失った人も多い」
インド大使館に行って帰国の申請をするしかないのだろうかと、彼は言った。インド政府は5月から、国外で足止めされている数十万人の自国民を救出するため、旅客機や海軍の船舶を動員して大規模な「本国帰還作戦」を実行している。
人的資本の輸出国の中でも、インドには特に、出稼ぎ労働者の逆流を懸念する理由がある。湾岸諸国で働くインド人は850万人。そのうち50万人が、ケララ州に戻るとみられるのだ。