バットマンに乳首を付けた男の生き様
Joel Schumacher’s Wild Ride
覚醒剤漬けの夏
「60年代は、覚醒剤を打ちまくって過ごした時期もある」という。「夏の間ずっと、ピチピチの水着一丁でラリっていた。あれだけクスリをやって、こうして生きていられるだけでもラッキーだ」
ニューヨーク州にある保養地ファイアーアイランドのゲイコミュニティーで過ごした「失われた」5年間については、こう語る。「ずっと麻薬漬けで、とにかく麻薬とセックスはセットだった。酒もそう。ハイな状態でやるセックスはセットだった。酒もそう。ハイな状態でやるセックスは、いわばアイスクリームサンデーに載せたチェリー。最高のお楽しみだった」。なおシューマカーは92年以降、酒も薬物も断っていた。
『ロストボーイ』はお子様映画になるはずだった
R指定を受けたホラーコメディー『ロストボーイ』は本来、かなり趣の異なる映画になるはずだったと、シューマカーは「夏の間ずっと、ピチピチの水着一丁でラリっていた。あれだけクスリをやって、こう99年に語っている。「監督に決まっていたリチャード・ドナーが『リーサル・ウェポン』のために降板し、私に譲ってくれた。ドナーが構想していたのは、たわいない子供向け映画。バイクを乗り回すチンピラ吸血鬼集団なんて、全く出てこなかった」
バットマンに乳首を付けたのは悪かったが
「バットマンのファンの皆さんをがっかりさせたことについてはおわびしたい」と、17年にネットメディアのバイスでざんげしている。「あの失敗はひとえに私の責任だ」
でもバットマンに乳首を付けたことは後悔していない
「あの頃、ゴムの成形技術は飛躍的に進歩していた。そこで解剖学的に正しいバットスーツを作ろうと思い立ち、ギリシャ彫刻の写真や医学書の人体解剖図を衣装デザイナーに渡した。乳首の付いたデザインを見て、これはいけると思った」
この決断に何年も悩まされ、キャリアが暗礁に乗り上げるとは、シューマカー自身、夢にも思っていなかった。
「あんなことになるとは、本当に予想外だった。考えが甘かったのかもしれないが、それでもあの乳首はよかったと思う。バットマンに乳首を付けた男として永遠に記憶されるのも悪くない」
2020年8月11日/18日号(8月4日発売)は「人生を変えた55冊」特集。「自粛」の夏休みは読書のチャンス。SFから古典、ビジネス書まで、11人が価値観を揺さぶられた5冊を紹介する。加藤シゲアキ/劉慈欣/ROLAND/エディー・ジョーンズ/壇蜜/ウスビ・サコ/中満泉ほか
[2020年7月28日号掲載]