アクセス殺到でシステムパンク オペラのウェブ配信でストレス発散
Lockdown Opera
『タンホイザー』 MARTY SOHL/MET OPERA
<憂鬱な日常を忘れるには過剰な演出がぴったり? ゴージャスなオぺラのウェブ配信が大人気に>
傑作オぺラを毎晩、無料でストリーミング配信する──。ニューヨークのメトロポリタン歌劇場(MET)がそう発表したのは3月13日のこと。新型コロナウイルス対策として、今シーズンの残りの公演が全てキャンセルとなったのを受けた措置だ。
『ナイトリーMETオぺラ・ストリームズ』と銘打たれたこのウログラムの「初日」は16日。演目は毎日変わるが、この日はビゼーの『カルメン』だった。ところが予想外に大量のアクセスが殺到して、早々にシステムがパンクしてしまった。
無理もない。なにしろ配信されるのは、METが2006年から世界の映画館で上映してきたライブビューイング・プログラム『ライブ・イン・HD』からえりすぐりの作品ばかり。しかも劇場で見れば数百ドル、映画館で見ても30ドルはする舞台が無料で見られるのだ。
「この並外れて困難な時期に、壮麗なオぺラを見る機会を提供することでオぺラファンを慰めたい」と、METのピーター・ゲルブ総裁は語った。
MARTY SOHL/MET OPERA
子供から大人まで自宅待機が全米に広がる中、オンライン・プログラムを拡充しているのはMETだけではない。
映画製作会社のユニバーサル・スタジオも3月半ば、『透明人間』や『ザ・ハント』など一般公開予定だった作品の一部についてオンデマンド配信を開始した。
こうした試みは、自宅に隔離されている多くの人に娯楽と安らぎを与えているが、テクノロジーの専門家は急速な需要拡大にインターネット環境が対応できるか心配している。自宅待機はしばらく続きそうだから、METのようなシステムダウンが今後、日常茶飯事になるかもしれない。
前代未聞のトラフィック
とはいえ、METのシステムダウンで一番の驚きは、オぺラを見たい人が大勢いたという事実かもしれない。これはオぺラファンの間でも意外だったようだ。『カルメン』の映像が途中で凍ってしまった晩、多くの人がソーシャルメディアにうれしい驚き(と落胆)を書き込んだ。
「ワオ、みんなでMETのサイトをダウンさせちゃった」と、オぺラファンのエレン・クレア・ラムはツイートした。
「でもうれしい。オぺラを見たい人がこんなにいたなんて知らなかった」