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カルチャー魔法使いから脱獄犯へ ダニエル・ラドクリフ インタビュー
Real-Life-Magic
子役時代とは風貌も変わり、演技にも真実味が ILLUSTRATION BY BRITT SPENCER
<あの「ハリー・ポッター」の主役が演じるのは、奇抜な方法で脱獄を試みる反差別の闘士>
魔法で危機をくぐり抜けるのは今度ばかりは難しそうだ。
「ハリー・ポッター」シリーズの主演で知られるダニエル・ラドクリフが最新作『エスケープ・フロム・プレトリア』(英語原題、日本公開は今秋の予定)で演じるのは、アパルトヘイト(人種隔離政策)時代の1979年に南アフリカの刑務所から脱獄を試みた実在の人物だ。
「誰もがわれこそはと考えそうだけど、実際に圧政に抵抗できる人はほんのひと握り」と、ラドクリフは言う。そのひと握りの1人が、本作で彼が演じる反アパルトヘイト活動家ティム・ジェンキンだ。
ジェンキンをはじめとする活動家たちは体制に逆らい、投獄される。「自分の意志を貫いた人々はそれだけで、映画の中で賛美されるに値する」と、ラドクリフは言う。
本作は、ただの伝記映画ではない。ジェンキン(本人もカメオ出演している)の著作に基づいて描かれるのは、手に汗握るスリラーだ。
「岐路に立つ男たちと南ア政治に関する物語であり、最高の脱獄映画でもある」と、ラドクリフは言う。「最高にイカれているのは、鍵を複製して牢獄からするりと抜け出してしまうところ」。H・アラン・スコットが話を聞いた。
――この作品に現代にも通じるものがあるだろうか。今の観客に感じてほしいことは?
あいにく、この映画のテーマはどの時代にも通じると思う。感じてほしいのは、ティムたちが自分の育ってきた社会を外側から見て、その不道徳さや暴虐な体制を捉えることができた点だ。
――作品がスリラー調になっているのはなぜ?
そもそも、実際に起きたことが信じ難い脱獄の物語だから。だって鍵を作るんだよ。ティムに会ったとき、彼は「誰でもやれることをやっただけ」っていう感じだったけれど、そんなことは絶対ない。
――子役時代に『ハリー・ポッターと賢者の石』で共演したイアン・ハート(クィレル役)と何年もたって再び共演するのは、どんな気持ち?
2人とも時の流れの恐ろしさを感じたと思う。いとおしい経験だった。
――「ハリー・ポッター」シリーズについて、めったに聞かれないけれど、聞いてほしいことはある?
共演者同士の関係についていつも聞かれるが、僕はスタッフのことなら何時間でも話していられる。ああいうシリーズものには珍しく、撮影現場には家族的で思いやりにあふれた空気が感じられた。それはスタッフがつくっていたものだと思う。
【参考記事】21世紀版『美女と野獣』で描かれる現代の女性像
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