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メンタルヘルスSNSのメンタルケア機能に注目するより、個人情報の行方を懸念して
Social Media and Mental Health
収集されたメンタルヘルスの個人情報の行方が心配…(写真はイメージ)NicolasMcComber-iStock
<ユーザーの心の問題に対処する各社の取り組みには落とし穴も>
メンタルヘルスの常識では、心のバランスを崩したときにはスマートフォンを置いて、SNSにあふれる他人の幸せアピール写真は見ないように、というのが鉄則だ。
だが、アメリカの写真共有アプリ「スナップチャット」は最近、この常識に反する解決策に乗り出した。スナップチャットのアプリ内で「不安」「いじめ」といった心の問題に関わる言葉を入力すると、近隣のメンタルヘルス専門家などのコンテンツが表示されるようになる。
2月半ばに発表されたこの新機能「Here for You」は今後数カ月かけて公開される。目標は、心の不調を感じているユーザーに、先手を打って情報提供することだ。
同社のジェン・スタウト副社長によれば、ユーザーが時にこの手のコンテンツを探していることは把握していたものの、これまでは有効な対策を打てなかった。「若く、傷つきやすい年頃のわがユーザーによい影響を及ぼさなければと責任感を覚える」と言う。
ここ数年でユーザーのメンタルヘルス対策を強化しているのは、他のソーシャルメディアも同様だ。心の健康に最も悪影響との悪名高きインスタグラムも、いじめ制限機能や自傷画像投稿禁止などの取り組みを進めている。
デジタル問題を専門とする精神科医ジョン・トラウスは、SNS使用で患者のストレスや不安レべルが増す可能性を指摘するが、スナップチャットのこの新機能については有益か、少なくとも無害だろうと考えている。むしろ彼が懸念するのはデータのプライバシーだ。
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収集されたメンタルヘルスの個人情報はどのように管理、保護されているのか。
フェイスブックの例では、 同社が自殺に関わる投稿や検索を追跡しており、場合によっては自殺をほのめかしたユーザーの自宅に警察を急行させていることが2018年に報じられ、問題になった。
スナップチャットの新機能の効果は現時点では判断できない。だがたとえよい結果を生んだとしても、「SNSのメンタルヘルスへの悪影響がこれで解決されたとは言えない」と、トラウスは指摘する。結局は、複雑なパズルに未知のピースを投入したにすぎないのだから。
© 2020, Slate
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