あなたを刺激する2020年に発売予定のアメリカの20冊
The 20 Most-Anticipated Books of 2020
FICTION 10作品
『グラスホテル』エミリー・セントジョン・マンデル(3月、クノッフ刊)
べストセラー『ステーション・イレブン』(邦訳・小学館)の著者が、彼女らしくて、さらに生き生きとした世界を構築。華やかなニューヨークでのポンジスキーム(投資詐欺の一種)の破綻、そして遠く離れたカナダ・バンクーバー島から姿を消した若い女性。一見無関係に思える2つの出来事の残響が見事に一つに収束する。早くもテレビドラマ化も決まっている。
『曲がった棒きれで会心の一撃』ゾラ・ニール・ハーストン(1月、アミスタッド刊)
1920年代のニューヨークで花開いたアフリカ系アメリカ人による文化運動「ハーレム・ルネサンス」。その中でも傑出した作品を残した黒人女性作家ハーストンの短編集。長らく絶版だった8篇を含む21の物語を収録する。
『あなたは独りじゃない』グリーア・ヘンドリックス、セーラ・ペッカネン(3月、セント・マーティンズ刊)
『ワイフ・ビトゥイーン・アス』などのサイコスリラーで人気のコンビが、またも腕前を発揮。人生のどん底にいる女性と、鉄の友情で結ばれた友人たちに囲まれ豊かな暮らしを謳歌する姉妹がどんでん返しの物語で交錯する。
『マイ・ダーク・バネッサ』ケイト・エリザベス・ラッセル(3月、ウィリアム・モロー刊)
主人公バネッサは15歳のとき、42歳の男性教師と関係を持つ。17年後、教師は性的暴行の罪で告発され、バネッサは過去の自分と向き合う。デビュー作にして、昨今耳目を集める「過去の性暴力」という主題に挑んだ意欲作。
『群れ』アンドレア・バーツ(3月、バランタイン・ブックス刊)
豪奢な内装を備える女性専用のコワーキングスぺース(共有型オフィス)に通うのは、それぞれ秘密を抱えた人々。あるカリスマ創業者が失踪し、姉妹は友情とキャリア、命さえも失う危機に直面しながら謎解きに奔走する。
『ミスター・ノーバディ』キャサリン・ステッドマン(1月、バランタイン・ブックス刊)
「ミスター・ノーバディ」という一人の男を中心に展開するサイコスリラー小説。彼は一体、何者なのか。話すことのできない彼は、いかに浜辺で失踪したのか。彼を診ることになった神経精神科医のエマ・ルイスはどんな関係があるのか。パズルの全体像が現れ始めても、疑問は増えていくばかりだ。
『リアル・ライフ』ブランドン・テイラー(2月、リバーヘッド・ブックス刊)
主人公は米アラバマ州出身の内向的な性格の黒人男性。大学がある中西部の町に移り住んで生化学の学位取得を目指すが、全て をちぐはぐに感じる。優しく濃密な筆致で、人種や性的指向、欲望をテーマに忘れ難い登場人物たちを描いたデビュー作。
『私のローズ・ゴールド』ステファニー・ロベル(3月、バークレー刊)
彼女自身が覚えている限り、ローズ・ゴールドは病気だった。もしくはそう信じていた――親が子供の病気をでっち上げたり 、大げさに誇張して周囲の同情を引こうとする「代理ミュンヒハウゼン症候群」と、その実例に触発されたデビュー作。著者は母娘のねじれた関係を丁寧に描いている。今年出版される本のうち、最もユニークな一冊であることは確実。
『彼女の手中の死』オテッサ・モシュフェグ(4月、ペンギン・プレス刊)
18年の話題作『私の休息とリラックスの年』の著者が、ジャンル分け不可能な物語で戻ってきた。高齢の未亡人が森の中を歩いていて、怪しいメモを発見する。そこからは独特のねじ曲がったスタイルで物語が展開。最後のページまで一気読みだ。
『ネイキッド・ケイム・ザ・フロリダ・マン』ティム・ドーシー(1月、ウィリアム・モロー刊)
私的制裁を下す連続殺人犯、サージ・A・ストームズのシリーズ最新作で、報復絶倒の冒険物語。今回は相棒のコールマンと共にフロリダ州に伝わるある都市伝説を調査するが、明るく陽気な結末に。
2020年2月11日号(2月4日発売)は「私たちが日本の●●を好きな理由【韓国人編】」特集。歌人・タレント/そば職人/DJ/デザイナー/鉄道マニア......。日本のカルチャーに惚れ込んだ韓国人たちの知られざる物語から、日本と韓国を見つめ直す。
[2020年1月14日号掲載]