あなたを刺激する2020年に発売予定のアメリカの20冊
The 20 Most-Anticipated Books of 2020
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<邦訳されるのが待ちきれない作品が目白押し。お気に入りの一冊で、英語の勉強を初めてみるのも良いだろう>
今年はどんな本と出合えるか、わくわくしている読書好きも多いだろう。そんな人のために、本誌はアメリカで今年発売になる本の中から期待大の20冊を厳選した。フィクションとノンフィクションを10冊ずつ。デビュー作もあれば、シリーズものの最新刊や歴史書も。あなたのお気に入りが必ず見つかるはずだ。
NON-FICTION 10作品
『時間との闘い──ある記者が再捜査する公民権運動時代の未解決殺人事件』ジェリー・ミッチェル(2月、サイモン&シュスター刊)
的確そのもののタイトルを冠する本書は、著者の調査報道ジャーナリストとしての活動を一歩先へ進めた作品だ。スリラー小説さながらだが、描かれているのは過去に起きたぞっとする犯罪と、その犯人たちをめぐる実話だ。
『侍女──王冠の陰の私の奇妙な人生』アン・グレンコナー(3月、アシェット刊)
王室マニアも、少し関心があるだけの人も、この回想録には夢中になるはず。筆者のグレンコナーは、エリザベス英女王の妹である故マーガレットの親友だった貴族出身の女性で、自らが私生活で味わった悲劇、王室の周辺で目撃した華やかな事件について率直につづる。
『スマックド──ホワイトカラーの野望と依存症と悲劇』イレン・ジマーマン(2月、ランダムハウス社刊)
ジャーナリストの著者が依存症の恐さを間近で見つめた本書は、2020年刊行の書籍のうち特にタイムリーで、時代を反映している。階級や文化を問わず共感を呼ぶオピオイド鎮痛薬依存の問題をありのままに、痛切なまでの姿勢で探る。
『輝かしい者と下劣な者──チャーチル、家族、ロンドン大空襲中の抵抗のサーガ』エリック・ラーソン(2月、クラウン刊)
べストセラー『悪魔と博覧会 』(邦訳・文藝春秋)の著者が、ナチドイツによる大空襲のさなかのロンドンを活写した待望の叙事詩的作品。
『パワー・ノートブック』ケイティ・ロイフェ(3月、フリープレス刊)
「女性であるとはどういうことか」について、ジャーナリストの著者が深く考察する本。自らや他のパパワフルな女性たちにつ いて、ノートに記述する形で語られていく。
『黒い波──サウジアラビアとイラン、中東の文化、宗教、集団記憶を崩壊させた40年のライバル関係』キム・ガタス(1月、ヘンリー・ホルト刊)
国際問題に関心を持つ読者に向け、著者はイラン革命の起きた1979年までさかのぼり現代の中東問題の始まりを解説する。歴史書ではあるが人にも焦点を当て、一気に読ませる。
『レースマン──選集 (1960~2015年)』ジュリアン・ボンド(マイケル・ロング編)(2月、シティ・ライツ刊)
社会活動家で公民権運動指導者ジュリアン・ボンドの著作を集めた本書は2020年必読の書だ。エッセー、書簡、インタビューを収めたアンソロジーは比類のない指導者に光を当てる。
『不気味の谷──ある回顧録』アンナ・ワイナー(1月、ファラー・シュトラウス・アンド・ジルー刊)
昨今よく耳にする「創造的破壊」という言葉だが、これは本当にいいものなのか。著者がテクノロジー業界で活躍した時代を描いた回顧録は気味悪く思える部分も示唆に富む部分もあり、今日的な意味を持つとともに未来予測本としても2020年を代表する一冊になるはずだ。
『栄光の希望──十字架にかけられたイエスの最後の言葉についての考察』ジョン・ミーチャム(2月、コンバージェント・ブックス刊)
本誌米国版の元編集長でアメリカ大統領の伝記作家としても知られる著者が、イエス・キリストの最後の7つの言葉を掘り下げる。端正で分かりやすい文体で信仰や歴史、愛や神の恩恵を読み解いていく。
『イエローバード── 石油、殺人、先住民の地で正義を追い求めた女性』 シエラ・クレーン・マードック(2月、ランダムハウス刊)
ノースダコタ州の3大提携部族MHA(マンダン、ヒダーツァ、アリカラ)の一員であるリッサ・イエローバードチェースは、地元の油田で働く白人青年が失踪したことを知り、真実を探ろうとする。リッサは石油業界と自身の部族との複雑で対立する2つの世界を、正義を求めて進んでいく。