夫の影響から解放され生まれ変わったセリーヌ様に乾杯!
Cheers to the Celinaissance
当時のディオンは既にポップスターとしての全盛期を過ぎていたから、筆者が心配したのは、いずれ彼女がほとんど表舞台に出なくなり、新しい読者から何の話か分からないと思われることだった。だが今は、「ディオンが最高でないと思う人のほうがおかしくない?」と未来の読者に思われることを心配している。
ディオンが51歳にして見事な変身を遂げた一番の理由は、2016年の夫ルネ・アンジェリルの死だろう。彼はディオンよりも26歳年上で、彼女が12歳のときマネジャーになり、26歳のときに結婚した(そのうさんくさい感じは、ここでは話題にしない)。
夫を失ったディオンの悲しみは、『カレッジ』(勇気という意味だ)にたっぷり表現されているが、その一方で過去3年間の彼女は明らかに解放されたように見える。当然だろう。それまでで彼女のアーティストとしての選択は、良くも悪くも、ほぼ一世代上の人物によってコントロールされていたのだ。
だからこそ12歳の天才少女は見事に世界的な成功を収めたのかもしれないが、新しい風というよりも、どこか過去の音楽を寄せ集めたような古くささを引きずってもいた。オペラとバーブラ・ストライサンドとエルビス・プレスリー、ティナ・ターナー、マイケル・ジャクソンをミックスしたイメージだ。
ディオンは今もそうした要素を維持しているが、今は彼女自身が自分のボスだ。
本人が複数のインタビューで認めているように、かつて彼女のアルバムやコンサートの制作ミーティングに出席していたのはアンジェリルだけだった。ディオンは上手に歌うことと、観衆を魅了することに集中し、ギャンブル中毒の夫が示すポップス界征服戦略におおむね従っていた。
もちろんディオンの性格を考えると、ビジネス面でも家庭内でも夫に自分の意見を言ったに違いない。だが今は、全てのギャンブルは彼女の判断で行われている。
少女でも老女でもなく
だから今の彼女は、長年のパートナーの死を嘆く一方で、パリ・ファッション・ウイークやMETガラに奇抜な衣装で登場し、屋台のホットドッグにかぶりつき、ドラァグクイーンと大騒ぎできる。
もちろん、その試みの全てが成功しているわけではない。『カレッジ』にも、明らかに失敗作と思える曲がある。例えば「ノーバディーズ・ウォッチング」は、時代遅れの軽いビートとメローなギターをミックスしたサウンドに、「誰も見ていないみたいに踊りたい」とありがちな歌詞をかぶせている。
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