夫の影響から解放され生まれ変わったセリーヌ様に乾杯!
Cheers to the Celinaissance
Charles Platiau-REUTER
<歌姫セリーヌ・ディオンの新アルバム『カレッジ』はアーティストとしての大胆な挑戦に満ちた意欲作>
セリーヌ・ディオンの新アルバム『カレッジ』が発表された。ディオンにとって通算12枚目の英語歌唱アルバムだが、今回のアルバムには40年近いキャリアで初めてのことが2つある。
1つは、アルバム発表イべントをニューヨークの伝説的なドラァグバー「リップスNYC」で開いたこと。クィア(性的少数者)にも熱烈なファンが多いディオンは、店のドラァグクイーン(女装パフォーマー)たちと大はしゃぎ。カラオケで過去のヒット曲を披露するほどのご機嫌ぶりだったという。
2つ目は、アルバム収録曲で初めて悪態語を使っていること。「パーフェクト・グッドバイ」で、「ディス・シット・イズ・パーフェクト(これって完璧)」と歌っている。
これまでよりもEDM(エレクトロニック・ダンス・ミュージック)を大胆に取り入れていることも、新アルバムの特徴と言えるだろう。過去にもEDMの影響を感じられる曲はあったが、あくまで控えめに戯れる程度だった。だが今回は、EDMの大御所デービッド・ゲッタを迎えるなど本格的な関心を示している。
これら全てが、ディオンがアーティストとして生まれ変わったことを示している。かつて、伸びやかな声量を生かしてドラマチックなヒット曲を連発した彼女は、オぺラ歌手もどきのポップス歌手と揶揄されることも少なくなかった。だが、今年で51歳を迎えた彼女には、そんな声を気にする気配はない。
大胆な挑戦はファッションにも表れている。ファッション業界にとって年に1度の大パーティーであるMETガラに、ディオンは今年、ほぼ全身がシルバーのフリンジに包まれた衣装で登場。頭にはゴールドに脱色したクジャクの羽根のヘッドピースを着けて、ゴージャスな女王ぶりを印象付けた。
夫の影響から解放されて
実は筆者は12年前の著書で、ディオンをポップカルチャーにおける悪趣味の境地と位置付けた(より正確に言えば、大衆にとてつもなく愛される一方で、一部には徹底的に嫌悪されるアーティストが生まれる現象を分析した)。それだけにディオンの再生は、やや気まずい驚きだったことを認めなくてはならない。