最新記事

研究

「100年後には肉食は廃れているかもしれない」それでも、肉はおいしい...

Did Meat Make Us Human?

2019年12月09日(月)16時45分
レベッカ・オニオン

写真はイメージ Valeria Blanc-iStock

<つい肉を食べてしまうのは本当に進化のせいなのか? 歴史と社会からひもとく人類と肉食の深遠な関係>

食用肉の生産が、当の動物ばかりか地球の気候や環境にも悪いのはみんな知っている。それでも肉はおいしい。本当はやめるべきなのにやめられないというジレンマが、リべラルな肉食派を苦しめる。

一方、人類は肉を食べて進化したという説を公然と支持する右寄りの肉食派も多い。記者会見でハンバーガーを食べながら、自然エネルギーや温暖化対策への公共投資を批判する共和党議員や、人工肉バーガーは世界の社会主義国化を狙うユダヤ人の陰謀だと主張するネオナチなどだ。

最近は肉しか食べずに健康になる「ライオンダイエット」まで登場。人間が物連鎖の頂点に立つことは生物学的に決まっていると認め、うまく活用しようというわけだ。

だが肉食が人間に「ふさわしい」という証拠は乏しいと、歴史家で社会学者のジョッシュ・バーソンは新著『肉問題──動物、人間、および食物の深遠な歴史(The Meat Question: Animals, Humans,and the Deep History of Food)』で指摘する。

本書は通説の2つに異を唱える。1つは、狩猟と(特に大型動物の)肉を食べる習慣が「私たちを人間にした」という前提。もう1つは、世界中どこでも人間は肉が大好きで、中国やインどなど新興国では経済的に豊かになるほど肉を食べたがる──つまり肉食は人間の宿命という考えだ。だがバーソンは、このどちらも正しくないと述べる。実は人間はかつては極端に幅広く何でも食べており、いつまたその状態に戻ってもおかしくないというのだ。

【参考記事】「死のない肉」クォーンが急成長 人工肉市場がアツい

人類の進化の過程で肉食が普及し、重要な役割を果たしたという主張を証明するための考古学的証拠は、量的にも質的にも不十分だ。例えばネアンデルタール人が何を食べていたか知るには、骨のコラーゲンなどから窒素同位体比を測定する必要がある。

ドイツのシェーニンゲン遺跡からは旧石器時代中期の動物の骨や化石が見つかっている。人間が当時大型動物を殺していた証拠として説得力がありそうだが、バーソンによれば1カ所だけでは全体図はつかめない。例えば小型動物の骨は朽ち果て、実際にはもっと多かった可能性がある。

一方、窒素同位体比を調べた結果、ネアンデルタール人はタンパク質を摂取するため植物も大量に食べていたことが分かった。歯や道具に付着していた植物の化石から、「時期や場所によっては肉はほとんど食べなかった」可能性もあるという。

あわせて読みたい
ニュース速報

ビジネス

米ギャップ、売上高見通し引き上げ ホリデー商戦好発

ビジネス

気候変動ファンド、1―9月は240億ドルの純流出=

ワールド

トランプ次期米大統領、ウォーシュ氏の財務長官起用を

ワールド

米商務長官指名のラトニック氏、中国との関係がやり玉
あわせて読みたい

RANKING

  • 1

    【ヨルダン王室】生後3カ月のイマン王女、早くもサッ…

  • 2

    【ヨルダン王室】世界がうっとり、ラジワ皇太子妃の…

  • 3

    残忍非道な児童虐待──「すべてを奪われた子供」ルイ1…

  • 4

    メーガン妃が「輝きを失った瞬間」が話題に...その時…

  • 5

    アジア系男性は「恋愛の序列の最下層」──リアルもオ…

  • 1

    メーガン妃が「輝きを失った瞬間」が話題に...その時…

  • 2

    【ヨルダン王室】生後3カ月のイマン王女、早くもサッ…

  • 3

    キャサリン妃が「涙ぐむ姿」が話題に...今年初めて「…

  • 4

    アジア系男性は「恋愛の序列の最下層」──リアルもオ…

  • 5

    残忍非道な児童虐待──「すべてを奪われた子供」ルイ1…

  • 1

    「家族は見た目も、心も冷たい」と語る、ヘンリー王…

  • 2

    メーガン妃が「輝きを失った瞬間」が話題に...その時…

  • 3

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃が出産後初めて公の場へ...…

  • 4

    カミラ王妃はなぜ、いきなり泣き出したのか?...「笑…

  • 5

    キャサリン妃が「大胆な質問」に爆笑する姿が話題に.…

MAGAZINE

LATEST ISSUE

特集:超解説 トランプ2.0

特集:超解説 トランプ2.0

2024年11月26日号(11/19発売)

電光石火の閣僚人事で世界に先制パンチ。第2次トランプ政権で次に起きること