「ダメ、ダメ」言い過ぎる母親を生む日本社会で、自己肯定感の低い子にしない最高の方法
連帯責任という強迫観念
江戸時代、日本の人口の約7%と言われた武士は「すべてはお家のため」と、主君に忠誠する態度、個をおさえこみ全体を活かす思想を持つことが理想とされていました。「まじめで従順であること」が最良の生き方という価値観があったわけです。
この価値観の裏に仕掛けられていたものが「連帯責任」という強迫観念です。一人の不始末が全体の責任となり、最悪の場合「お家とりつぶし」になるという恐怖を武士は抱えていたのです。
連帯責任は武士だけのものではありません。江戸時代の町村は「五人組」という制度によって管理されていました。これは近隣5戸を一組とし、互いに連帯責任で年貢納入や犯罪取り締まりなどを行なうものです。
昔は「個性」のことを「クセ」と呼んでいました。「クセがある人」というのは個性が強い人のことです。クセのある人は、トラブルを起こし、まわりに悪い影響を与える可能性があります。だからクセ(個性)を抑えこもうとする集団心理が働いていたのです。「村八分」と呼ばれ、秩序を守らない人との交際を村全体が絶つという習慣が、最近まで日本に残っていたのはその一例です。
もちろん今の日本には連帯責任はありませんが、一度根付いた価値観は人々の心から簡単に消えてなくなるものではありません。個人や家庭や地域社会や学校や会社組織において、今も、連帯責任という強迫観念が無意識のうちに継承され、人々を抑圧しているのではないでしょうか。
ダメ、ダメ言い過ぎる日本人の母親
デパートで「さわっちゃダメ!」、「そっち行っちゃダメ!」と子どもの後を追いかけましている母親をよく見かけます。子どもからすれば、デパートには見たこともない魅力的なモノが溢れています。そんなモノを見ればさわってみたくなるのが人の常です。でも母親は「お店に迷惑をかけないように」、「まわりの人の迷惑にならないように」と、子どもの行動を抑制します。
何事にも日本人の親はまわりの目を気にしすぎるところがあります。子どもが泣けば近所迷惑になると必死であやし、子どもが走れば先回りして子どもをブロックする。子ども同士のおもちゃの取り合いになれば、親がおもちゃを取り上げて相手の子に渡してしまう。子どもは「まわりに迷惑をかけない」という大義名分の下、自発的な行動をコントロールされ続けるのです。
自己肯定感を育てるには「自分の意欲でやったことができた!」という成功体験が重要なのですが、世間がうるさい日本では「ちゃんとしつけなければいけない」というプレッシャーが大きく、その結果、子どもの行動をコントロールする場面の方が多くなってしまうのです。
子どもの自発的な行動を、親や周囲の大人や社会全体が、もう少しおおらかな目で見守ることが子どもたちの自己肯定感の向上につながるのではないでしょうか。人はだれでも「まわりに迷惑をかけて成長する」のです。ましてや世の中のルールも常識も知らない子どもですから、失敗したり、間違ったり、迷惑をかけるのがあたりまえなのです。