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地球に優しい「インディゴブルー」の作り方 女性起業家が描く20年後の世界とは

Making Blue Jeans “Green”

2019年10月26日(土)14時30分
ニューズウィーク日本版編集部

――解決しようとしている課題について教えてほしい。

ミシェル インディゴの製造には、生産量の100倍近い石油が必要だ。ホルムアルデヒドやシアン化物といった有毒物質も使われている。働く人の皮膚や環境にとって毒性の強い化学的還元剤で処理しなければならない水質汚染物質もある。

――そこをどう解決する?

タミー 自然界にあるバクテリアのような細胞は、より安全でクリーンな方法で人類に有用なさまざまな化学物質を生み出すように作り替えることができる。

ミシェル 私たちは石油製品やシアン化物に頼らず微生物と砂糖を使って染料を作り、きつい化学物質に頼らず天然由来の酵素を使いデニム糸にインディゴを定着させている。だから製造過程全体の毒性ははるかに低い。

【参考資料】財布やポケットに入れてはいけない、新アップルカードにユーザーは困惑しきり

――他企業から学んだ教訓は?

タミー 合成生物学関連の企業でよくあるのが、製造過程(の開発)に時間を取られて商品の製造になかなかこぎ着けないケース。科学の進歩を実用化するには長い時間がかかることがあるから、無理もないだろう。(でも)私たちはできるだけ早く製品を消費者の手に届けて、フィードバックを得られるように努めている。

――ティンクトリウムの製品はいつ頃買えるようになるか。

ミシェル 既に予約は受け付けていて、2年以内には1本目のジーンズを出荷できると思う。

――これまでで最も苦労した点は何?

ミシェル 新技術を開発するには時間も資金も必要だ。商業化に向けてパートナーや投資家に話を持っていく前に万全の態勢を整えようと時間をかけ過ぎてしまいがちだが、起業となると実際にはそんな余裕はない。

――技術開発と事業が順調に展開した場合、20年後の世界はどうなっていると思う?

ミシェル 消費者が自分たちの着る服について意識的な決断を下し、現代人が持続可能性と食べ物の関係について考えるのと同じようにファッションについても考えるような未来を夢見ている。もし技術面でうまくいけば、ティンクトリウムは世間の人々がそうした意識を持つ一助となれるはずだ。


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※10月23日発売号は「躍進のラグビー」特集。世界が称賛した日本の大躍進が証明する、遅れてきた人気スポーツの歴史的転換点。グローバル化を迎えたラグビーの未来と課題、そして日本の快進撃の陰の立役者は――。

[2019年10月22日号掲載]

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