社会は女性を信じるか──34年前と変わらない、21世紀の現実
Gilead Revisited
ドラマ版『侍女の物語』の一場面 COURTESY OF MGM
<M・アトウッドの『侍女の物語』の続編を「深読み」すると21世紀の現実とリンクした痛烈な皮肉が浮かび上がる>
ギレアデ共和国への扉が再び開かれる──高く評価されたディストピア小説『侍女の物語』の刊行から34年、マーガレット・アトウッドが続編『ザ・テスタメンツ』を発表した。
9月10日に各国で発売された本書は前作と同じく、全体主義的権力、性と生殖に関する女性の権利や国家のアイデンティティーをめぐって、30年後も続く論議を引き起こすに違いない。
舞台は『侍女の物語』で描かれた出来事から15年後のギレアデ。物語は3人の女性の視点から紡がれていく。
そのうち1人は、前作(とそれを原作とするHuluのドラマ)のファンにはおなじみのリディアおばだ。「侍女」たちの監視役である打算的な彼女を通じて、読者は宗教的独裁国家ギレアデの中枢にうごめく陰謀をより詳しく知ることになる。残る2人は、ギレアデの体制内で育った若い女性アグネスと、国境を隔てたカナダに住むもう1人の若い女性デイジーだ。
Huluによるドラマ化(2017年に配信開始)や16年米大統領選でのドナルド・トランプの勝利という背景もあって、『侍女の物語』のテーマは現代の読者の心にも深く響く。性と生殖に関する権利や女性器切除、儀式的レイプなど多岐に渡る描写はどれも、作者によれば「いつか、どこかで既に起きたこと」だ。
性暴力と女性たちの証言
アトウッドは作品の解釈を読者に任せることを好み、物語や登場人物をめぐる説について、どれが正しいと語ることはない。だが現実世界の出来事に触発されているならば、『ザ・テスタメンツ』の執筆の際にも何かが念頭にあったはず。それは何か、あえて分析してみよう(以下、ネタバレを含む可能性あり)。