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育児子供がいる人は幸せを感じていない? 現代の親たちが抱えるジレンマとは
The Parent Trapped
無限の可能性 どんな社会がわが子を待っているのか、親は想像しながら模索するしかない MAX RIESGO/ISTOCKPHOTO
<子供の将来の可能性に備えたいだけなのに──明日が見えない時代の育児に疲弊する現代人>
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子供がいる親は、子供がいない人よりも幸せを感じていない。そんな研究に興味をそそられて、ニューヨーク誌の編集者で子供を持つ母親でもあるジェニファー・シーニアは全米の家族を取材。著書『楽しいけれど楽しくない──現代の親が抱えるパラドックス』にまとめた。
賢くて、幸せな子供を育てようと模索する親たちは、どうして惨めな気持ちに陥ってしまうのか。本誌マリッサ・ベイツがシーニアに話を聞いた。
――いつの時代の親も、それぞれ子育てで悩んできた。
私たちは、親としての役割がどうあるべきかが分からない、歴史的な移行期の最中にいる。将来のために準備をさせることと、子供を幸せにすること。その2つが親としてやるべきことだとは分かるけれど、どちらもあまりに漠然としている。
――移行期はいつ頃から?
50年代から、より過保護で教育を重視する子育てが始まった。子供に必要なあらゆるものを与えるために、親は必死に働くようになった。
80年代に親の負担はさらに増えた。仕事を持つ女性が増えて、共働き家庭の子育ての在り方を模索するようになった。社会のグローバル化が始まって、さらに負担が増えている。
今は、何を目指して子供を育てればいいのか分からない時代だ。わが子が将来就くのがどんな仕事なのか、親には想像もできない。
――だから現代の親は参っているのだろうか。
親として何をすればいいのか分からないまま、あらゆることをやろうとして爆発寸前だ。将来が見えないまま、子供があらゆる可能性に対応できるようにしようとする。ミュージカルで、全ての役の準備をさせるようなもの。『キャッツ』のグリザベラだけでなく、全ての猫の役をいつでもできるようにするなんて、あり得ない!
――しかも子供がどの猫になるか、親には決められない。
そのとおり。子供がどんな猫になりたいと思うか、親には分からない。今は世界に存在しない種類の猫かもしれない。
セルゲイ・ブリンやラリー・ペイジが6歳の頃に、「大きくなったら世界中の情報を調べる道具を発明するんだ! グーグルという名前にするよ!」と言ったら、母親はこんなふうに答えただろう。「すごいわねえ。さあ、外で遊んできなさい」
私たち自身に見えていない将来への準備をさせることが親の仕事だから、できるだけ多くのことを子供に詰め込んで、どれかが役に立てばと思う。チームワークを学ぶためにサッカー教室へ通わせて、チェスも習わせる。周囲より優れた子供にしなければという思いがあっても、何をもって優れていると言えるのか、よく分からない。
私の母は、そんなことでは悩まなかった。ベビーサークルに入れて、おもちゃを2個与えればよかった。それでも私は無事に育った。
――子育てが大変な理由を、神経科学的に分析すると?
神経科学のおかげで、子供は前頭前野がほとんど発達していないことが分かっている。これは親にとって、とても役に立つ知識だ。まだ論理的に考えられない子供を、論理的に諭そうとしなくなるだろう。
子供は何かショックを受けたら、いずれその傷が癒えるということが理解できない。目の前のクッキーをもらえないことだけが、永遠に続く現実なのだ。
これらの背景にある科学を理解すれば、親は安心できる。自分が悪いのではないと気が付く。子育ての方針を変える手助けにもなるだろう。
――子供は小さなモンスター、というあなたの表現に共感する。
作家で児童心理療法士のアダム・フィリップスは、子供はさまざまな意味で本当のモンスターと区別がつかない、と言っている。彼らは大人と同じ言葉をしゃべらない。自分の動きをコントロールできない。衝動に駆られて動く暴君だ。
――あなたは親のストレス反応にも言及している。父親は自由な時間に(ストレスホルモンの)コルチゾールの分泌量が最も少なくなるが、母親はパートナーが手伝ってくれるときしかコルチゾールは減らない。
女性は自由な時間を単純に楽しめないという悲劇が見えてくる。誰かがやってくれると分かっていなければ、リラックスできないから。
――あなた自身の教訓は?
仕事と子育てに、時間を公平に配分できないと悲しくなる。親も肩の力を抜こうと、私自身がいつも言っているのに!
<ニューズウィーク日本版SPECIAL ISSUE「0歳からの教育 学習編」掲載>
※詳しくはニューズウィーク日本版SPECIAL ISSUE 「0歳からの教育 学習編」をご覧ください。
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