逃げ切りたい中高年は認めたくない? ミレニアル世代が高給でも仕事を辞める理由
無計画に辞めて後悔する人もいる
しかしながら、仕事を辞めたミレニアル世代の全てが幸せという訳ではない。
ニューヨーク・ポストは、仕事を辞めて行き詰ってしまったケースを報じている。「私は何も考えずに辞めた。そして悩んでいる」と話すのは、カウンセラーとして7年勤務した後に退職したジェシカ(姓は非公開)。なぜなら彼女はもはや自分を「処理」できないから。彼女は次に何をするか確信が持てず、真剣に新しい仕事を探していない。
辞める最中のことをジェシカは、「私はある意味、死んでいるようだった。去ることは不安でいっぱいだった。でも退職は変化をもたらす希望のようなものだった」と振り返る。
しかし「退職」というジェシカにとっての希望は、今となっては全く逆のもの。仕事を辞めたまではいいものの、その先について無計画だった。結果、次に何をするか考えがまとまらず、職探しに踏み出せない。
「私は心配しすぎている。自分の人生で何が起きているのかわからない。夏を楽しむことさえできない」
しかし、ジェシカのように後悔する人は一定数いるものの、実際に仕事を辞めたミレニアル世代の大半はそうではない。大きなエージェンシーに所属し、10万ドル以上稼いだコピーライターの職を昨年の夏に捨てたグレイシー・ハルパーン(31)は、無計画に辞めながらも後悔していない。
ハルパーンは、お金を稼ぎ、表面的には成功した人生を送ってたかつてのことを虚しく感じていた。ストレスにがんじがらめにされ、働き過ぎの状態だった。「私はお金を持っていたけど、そのお金は全部病気の治療費で消えた。『こんなの私の人生じゃない』と思った」と我に返った。
彼女も前出のジェシカと同じように、何も準備せず退職したし、それは「とっても怖かった」と話すが、ポジティブだ。ロウワーイーストサイドのアパートを引き払って向かったのは、インドネシアのバリ島。「星座に基づいて、ひとり旅に出るべきだという記事をオンラインで読んだ。私は魚座。本当に無計画なの」
若い才能の争奪戦が過熱
監査法人・コンサルティング会社のデロイトが発表した「2018 Deloitte Millennial Survey(ミレニアル世代に関する調査)」によると、ミレニアル世代の43%は2年以内に仕事を辞めることを望んでいる。労働省によると、退職する労働者(年代を問わない)の割合は拡大しており、2018年5月には2.4%に達した。AP通信によると、この16年で最も高い数値という。
現在の労働市場について、人材業に長年携わってきたCat Graham氏は「20年前にはあり得ない状況」と言う。「雇用市場は今とても盛り上がっている。失業率は低く、才能を争う戦いは今までになく過熱している」
仕事に対して嫌という気持ちの有無に関わらず、後悔する・しないの基準は、自分自身の納得感にありそうだ。だってミレニアル世代にしてみたら、終身雇用なんて霞のような話だし、この恩恵に与れる可能性が高い優良企業に入れるなんて至難の業。それに、たとえ入社できたとしても幸せが約束される訳でもない。せっかくやる気があっても、能力の低い上司やパワハラに遭う可能性は大いにある。それでキャリアもメンタルも潰れてしまえば、不幸以外の何ものでもない。
――そもそも、仕事のキャリアと人生を天秤にかけるのもナンセンスな話だが、もし、今あなたが会社に残ろうとしている理由を支えるのが「霞」だとしたなら。実態のないものに期待し続ける人生のほうがリスクかもしれない。