最新記事

米政治

迷走続くアメリカ政治、打開のカギは共和党にあり

2015年1月9日(金)12時55分
ウィリアム・ドブソン(本誌コラムニスト)

厳格な保守路線は不可能

 共和党のほうがより複雑で、来年の連邦議会選挙も視野に入れなければならない。同選挙で再選を目指す上院議員は民主党の10人に対し、共和党は24人。こうした共和党上院議員の多くが、民主党支持者の多い州や両党の支持者が拮抗する州で票を争うことになる。

 共和党は、08年と12年の大統領選でオバマが勝利した7州で議席を守らなければならない。民主党の支持基盤が強固な地域のため、多くの共和党議員は厳格な保守路線を取るわけにはいかないだろう。来年までイデオロギー色の強い議会運営を続ければ再選は不可能だ。そのためここ数年とは違って、現実に結果を出さなければならない共和党議員が存在する。つまり、必要とあれば党派を超えて民主党議員と協力しなければならないわけだ。

 共和党のマコネル上院院内総務も膠着打開のカギを握る。上院トップで守旧派のマコネルは、超党派合意を目指す実務肌の交渉屋だ。13年の政府機関閉鎖を招いた共和党議員を批判し、高リスクの政治戦略に走れば共和党の支持率も低下すると考えている。

 マコネルは早くも通商や税制改革や大規模インフラ投資の一部で、オバマ政権との合意が可能という見方を示している。同時に、本来は民主党が強い選挙区で再選を目指す共和党上院議員がいることも忘れてはいない。何しろ一定数の議員が再選を果たせなければ、彼自身が上院トップの座を追われるのだから。

 そのためにはもちろん、マコネルら共和党幹部が党内をまとめなければならない。草の根保守派連合ティーパーティーは、ほとんどの法案で党内と協力する気がない。民主党議員はもとより、共和党穏健派とさえ協力しているとみられるのは汚点だと、彼らは考えている。共和党議員の中にも上院の多数派になった以上はまとまりを示したいという意見はあるが、中間選挙でティーパーティー系の強硬派議員が増えたのも事実だ。

 今年のアメリカ政治がどの方向に向かうかはオバマではなく、共和党幹部がどの程度リーダーシップを発揮できるかに懸かっているのかもしれない。

[2015年1月13日号掲載]

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

全米鉄鋼労組、日鉄のUSスチール買収に断固反対 財

ビジネス

FRBの独立性、経済成果に「不可欠」=ミネアポリス

ビジネス

米中の現状、持続可能でない 貿易交渉の「長期戦」想

ワールド

プーチン氏、現在の前線でウクライナ侵攻停止を提案=
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:独占取材 カンボジア国際詐欺
特集:独占取材 カンボジア国際詐欺
2025年4月29日号(4/22発売)

タイ・ミャンマーでの大摘発を経て焦点はカンボジアへ。政府と癒着した犯罪の巣窟に日本人の影

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「スケールが違う」天の川にそっくりな銀河、宇宙初期に発見される
  • 2
    【クイズ】「地球の肺」と呼ばれる場所はどこ?
  • 3
    パウエルFRB議長解任までやったとしてもトランプの「利下げ」は悪手で逆効果
  • 4
    日本の人口減少「衝撃の実態」...データは何を語る?
  • 5
    アメリカは「極悪非道の泥棒国家」と大炎上...トラン…
  • 6
    コロナ「武漢研究所説」強調する米政府の新サイト立…
  • 7
    【クイズ】世界で最もヒットした「日本のアニメ映画…
  • 8
    なぜ世界中の人が「日本アニメ」にハマるのか?...鬼…
  • 9
    「生はちみつ」と「純粋はちみつ」は何が違うのか?.…
  • 10
    教皇死去を喜ぶトランプ派議員「神の手が悪を打ち負…
  • 1
    【クイズ】世界で最も「半導体の工場」が多い国どこ? 1位は意外にも...!?
  • 2
    「生はちみつ」と「純粋はちみつ」は何が違うのか?...「偽スーパーフード」に専門家が警鐘
  • 3
    しゃがんだ瞬間...「えっ全部見えてる?」ジムで遭遇した「透けレギンス」投稿にネット騒然
  • 4
    【渡航注意】今のアメリカでうっかり捕まれば、裁判…
  • 5
    女性職員を毎日「ランチに誘う」...90歳の男性ボラン…
  • 6
    「スケールが違う」天の川にそっくりな銀河、宇宙初…
  • 7
    【クイズ】売上高が世界1位の「半導体ベンダー」はど…
  • 8
    「100歳まで食・酒を楽しもう」肝機能が復活! 脂肪…
  • 9
    自宅の天井から「謎の物体」が...「これは何?」と投…
  • 10
    『職場の「困った人」をうまく動かす心理術』は必ず…
  • 1
    【話題の写真】高速列車で前席のカップルが「最悪の行為」に及ぶ...インド人男性の撮影した「衝撃写真」にネット震撼【画像】
  • 2
    「一夜にして死の川に」 ザンビアで、中国所有の鉱山ダムから有毒の水が流出...惨状伝える映像
  • 3
    健康寿命を伸ばすカギは「人体最大の器官」にあった...糖尿病を予防し、がんと闘う効果にも期待が
  • 4
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い…
  • 5
    【心が疲れたとき】メンタルが一瞬で “最…
  • 6
    テスラの没落が止まらない...株価は暴落、業績も行き…
  • 7
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる…
  • 8
    間食はなぜ「ナッツ一択」なのか?...がん・心疾患・抜…
  • 9
    自らの醜悪さを晒すだけ...ジブリ風AIイラストに「大…
  • 10
    北朝鮮兵の親たち、息子の「ロシア送り」を阻止する…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中