オバマ弾劾にこだわるアメリカの右派
オバマ憎しの一念に燃え
それでも、クライバーンの警告はまんざら的外れではない。共和党右派は「オバマはアメリカ生まれではない」という言い掛かりに始まって、オバマの大統領としての資格に異議を唱え続けてきた。オバマが出生証明書を隠して出生地を偽ったと主張し、右派の大喝采を浴びたのは不動産王のドナルド・トランプだ。
極右の論客ディネシュ・デスーザが制作したドキュメンタリー『2016──オバマのアメリカ』では、オバマはケニア人の父の遺志を継いで、アメリカの破壊を企てる反植民地主義者として描かれている。作品の出来はともかく、この映画が大反響を呼んだことは無視できない。
12年の選挙では、共和党は「オバマに大統領の資格なし」の主張にくみしなかった。かといって否定したわけでもない(ニュート・ギングリッチ元下院議長があからさまに反オバマ感情をあおったのは、例外だ)。
オバマの大統領としての正統性を疑問視する声が共和党の一般党員レベルでの弾劾要求につながったのだろう。1期目にはオバマの出生問題が右派の結束に役立ったが、今はオバマ弾劾の大合唱がその役目を果たしている。
それでも、共和党が実際に弾劾を推し進める可能性は少ない。2年後には大統領選挙があるからだ。最高裁をはじめ障害は多く、共和党の自殺行為にもなりかねない。もっとも、共和党指導部が女性スキャンダルでクリントン元大統領の弾劾に出て痛い目に遭った98年にもそれは同じだったのだが。
© 2014, Slate
[2014年11月25日号掲載]