最新記事

アメリカ政治

オバマ弾劾にこだわるアメリカの右派

2014年11月26日(水)15時52分
ジャメル・ブイエ

オバマ憎しの一念に燃え

 それでも、クライバーンの警告はまんざら的外れではない。共和党右派は「オバマはアメリカ生まれではない」という言い掛かりに始まって、オバマの大統領としての資格に異議を唱え続けてきた。オバマが出生証明書を隠して出生地を偽ったと主張し、右派の大喝采を浴びたのは不動産王のドナルド・トランプだ。

 極右の論客ディネシュ・デスーザが制作したドキュメンタリー『2016──オバマのアメリカ』では、オバマはケニア人の父の遺志を継いで、アメリカの破壊を企てる反植民地主義者として描かれている。作品の出来はともかく、この映画が大反響を呼んだことは無視できない。

 12年の選挙では、共和党は「オバマに大統領の資格なし」の主張にくみしなかった。かといって否定したわけでもない(ニュート・ギングリッチ元下院議長があからさまに反オバマ感情をあおったのは、例外だ)。

 オバマの大統領としての正統性を疑問視する声が共和党の一般党員レベルでの弾劾要求につながったのだろう。1期目にはオバマの出生問題が右派の結束に役立ったが、今はオバマ弾劾の大合唱がその役目を果たしている。

 それでも、共和党が実際に弾劾を推し進める可能性は少ない。2年後には大統領選挙があるからだ。最高裁をはじめ障害は多く、共和党の自殺行為にもなりかねない。もっとも、共和党指導部が女性スキャンダルでクリントン元大統領の弾劾に出て痛い目に遭った98年にもそれは同じだったのだが。

© 2014, Slate

[2014年11月25日号掲載]

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

ロシア、中距離弾でウクライナ攻撃 西側供与の長距離

ビジネス

FRBのQT継続に問題なし、準備預金残高なお「潤沢

ワールド

イスラエル首相らに逮捕状、ICC ガザで戦争犯罪容

ビジネス

貿易分断化、世界経済の生産に「相当な」損失=ECB
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:超解説 トランプ2.0
特集:超解説 トランプ2.0
2024年11月26日号(11/19発売)

電光石火の閣僚人事で世界に先制パンチ。第2次トランプ政権で次に起きること

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本人はホームレスをどう見ているのか? ルポに対する中国人と日本人の反応が違う
  • 2
    Netflix「打ち切り病」の闇...効率が命、ファンの熱が抜け落ちたサービスの行く末は?
  • 3
    「1年後の体力がまったく変わる」日常生活を自然に筋トレに変える7つのヒント
  • 4
    【ヨルダン王室】生後3カ月のイマン王女、早くもサッ…
  • 5
    NewJeans生みの親ミン・ヒジン、インスタフォローをす…
  • 6
    元幼稚園教諭の女性兵士がロシアの巡航ミサイル「Kh-…
  • 7
    ウクライナ軍、ロシア領内の兵器庫攻撃に「ATACMSを…
  • 8
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り…
  • 9
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参…
  • 10
    若者を追い込む少子化社会、日本・韓国で強まる閉塞感
  • 1
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」に警鐘【最新研究】
  • 2
    自分は「純粋な韓国人」と信じていた女性が、DNA検査を受けたら...衝撃的な結果に「謎が解けた」
  • 3
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り捨てる」しかない理由
  • 4
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参…
  • 5
    朝鮮戦争に従軍のアメリカ人が写した「75年前の韓国…
  • 6
    アインシュタイン理論にズレ? 宇宙膨張が示す新たな…
  • 7
    沖縄ではマーガリンを「バター」と呼び、味噌汁はも…
  • 8
    クルスク州の戦場はロシア兵の「肉挽き機」に...ロシ…
  • 9
    メーガン妃が「輝きを失った瞬間」が話題に...その時…
  • 10
    中国富裕層の日本移住が増える訳......日本の医療制…
  • 1
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」に警鐘【最新研究】
  • 2
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参加で「ネットの自由」を得た兵士が見ていた動画とは?
  • 3
    外来種の巨大ビルマニシキヘビが、シカを捕食...大きな身体を「丸呑み」する衝撃シーンの撮影に成功
  • 4
    朝鮮戦争に従軍のアメリカ人が写した「75年前の韓国…
  • 5
    自分は「純粋な韓国人」と信じていた女性が、DNA検査…
  • 6
    北朝鮮兵が味方のロシア兵に発砲して2人死亡!? ウク…
  • 7
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り…
  • 8
    足跡が見つかることさえ珍しい...「超希少」だが「大…
  • 9
    モスクワで高層ビルより高い「糞水(ふんすい)」噴…
  • 10
    ロシア陣地で大胆攻撃、集中砲火にも屈せず...M2ブラ…
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中