最新記事

ハッカー

「アメリカを売った男」の新たな一撃

G8のタイミングに合わせて首脳会談での盗聴の実態を暴露する一方、一般市民からの公開質問にも答えるスノーデンの戦い

2013年6月18日(火)16時18分
タリア・ラルフ

逃亡者 香港では米政府に追われるスノーデンを支援する声が広がっている Bobby Yip-Reuters

 米国家安全保障局(NSA)がネット上の膨大な個人情報を収集していたと告発した同局の元契約職員エドワード・スノーデンが、新たな波紋を呼び起こしている。

 英国・北アイルランドでG8サミット(主要国首脳会議)が始まる前日の16日、英紙ガーディアンの電子版はスノーデンから入手した新情報を暴露。これによれば、09年にロンドンで20カ国・地域(G20)首脳会議が開かれた際、イギリス政府が出席者の電話や電子メールを傍受していたという。

 イギリス政府が沈黙を守るなか、翌17日にはぎくしゃくしたムードでG8がスタート。同日、スノーデンはさらなる動きに出た。同じくガーディアンの電子版上で、一般市民からの質問に答える場を設けたのだ。

 質問は同紙のサイト上やツイッターで公募。その中から選ばれた十数個の問いに対し、同日の午前11時からおよそ2時間にわたって同サイト上で回答した。

告発の舞台に香港を選んだ理由

 スノーデンが中国に米政府の極秘情報を提供していたのではないかという噂については完全否定。中国を目の敵にするお決まりのパターンであり、「米政府の職権乱用から目をそらさせるのが目的だ」と答えた。

「私が中国のスパイなら、なぜ北京に直行しなかったのか。そうすれば今頃、豪勢な暮らしを送っていたはずだ」

 一方、NSAで働いていた当初、自分のデスクからどんな相手も盗聴できたと語ったことについては、同じ姿勢を変えなかった。

「米政府は私を投獄したり殺害しても、この一件を隠蔽することはできない」とも、スノーデンは別の質問で答えている。「真実は明らかになりつつある、もう誰も止められない」

 アメリカ市民の自由を向上させるため、極秘情報をリークする場合のアドバイスを求められると、一言こう答えた。「この国は命をかけるだけの価値がある」

 希望していた亡命先アイスランドに直行せず、香港へ渡った理由については、「途中で移動を阻止される恐れがあった。だから予約なしでチケットが入手できて、すぐに拘束されたりしない文化的土壌と法制度が整った場所を選ぶ必要があった」と答えた。

「そんな条件に合っていたのが香港だった。アイスランドだと告発を発表する前にアメリカへ引き渡され、投獄されるかもしれない。米政府ならやりかねない」

From GlobalPost.com特約

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

アングル:フィリピンの「ごみゼロ」宣言、達成は非正

ワールド

イスラエル政府、ガザ停戦合意を正式承認 19日発効

ビジネス

米国株式市場=反発、トランプ氏就任控え 半導体株が

ワールド

ロシア・イラン大統領、戦略条約締結 20年協定で防
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:トランプ新政権ガイド
特集:トランプ新政権ガイド
2025年1月21日号(1/15発売)

1月20日の就任式を目前に「爆弾」を連続投下。トランプ新政権の外交・内政と日本経済への影響は?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「拷問に近いことも...」獲得賞金は10億円、最も稼いでいるプロゲーマーが語る「eスポーツのリアル」
  • 2
    「搭乗券を見せてください」飛行機に侵入した「まさかの密航者」をCAが撮影...追い出すまでの攻防にSNS爆笑
  • 3
    【クイズ】世界で1番マイクロプラスチックを「食べている」のは、どの地域に住む人?
  • 4
    【クイズ】次のうち、和製英語「ではない」のはどれ…
  • 5
    感染症に強い食事法とは?...食物繊維と腸の関係が明…
  • 6
    フランス、ドイツ、韓国、イギリス......世界の政治…
  • 7
    オレンジの閃光が夜空一面を照らす瞬間...ロシア西部…
  • 8
    ティーバッグから有害物質が放出されている...研究者…
  • 9
    「ウクライナに残りたい...」捕虜となった北朝鮮兵が…
  • 10
    強烈な炎を吐くウクライナ「新型ドローン兵器」、ロ…
  • 1
    ティーバッグから有害物質が放出されている...研究者が警告【最新研究】
  • 2
    体の筋肉量が落ちにくくなる3つの条件は?...和田秀樹医師に聞く「老けない」最強の食事法
  • 3
    睡眠時間60分の差で、脳の老化速度は2倍! カギは「最初の90分」...快眠の「7つのコツ」とは?
  • 4
    メーガン妃のNetflix新番組「ウィズ・ラブ、メーガン…
  • 5
    「拷問に近いことも...」獲得賞金は10億円、最も稼い…
  • 6
    轟音に次ぐ轟音...ロシア国内の化学工場を夜間に襲う…
  • 7
    【クイズ】世界で1番マイクロプラスチックを「食べて…
  • 8
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参…
  • 9
    ドラマ「海に眠るダイヤモンド」で再注目...軍艦島の…
  • 10
    【クイズ】次のうち、和製英語「ではない」のはどれ…
  • 1
    ティーバッグから有害物質が放出されている...研究者が警告【最新研究】
  • 2
    大腸がんの原因になる食品とは?...がん治療に革命をもたらす可能性も【最新研究】
  • 3
    体の筋肉量が落ちにくくなる3つの条件は?...和田秀樹医師に聞く「老けない」最強の食事法
  • 4
    夜空を切り裂いた「爆発の閃光」...「ロシア北方艦隊…
  • 5
    インスタント食品が招く「静かな健康危機」...研究が…
  • 6
    TBS日曜劇場が描かなかった坑夫生活...東京ドーム1.3…
  • 7
    「涙止まらん...」トリミングの結果、何の動物か分か…
  • 8
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 9
    「戦死証明書」を渡され...ロシアで戦死した北朝鮮兵…
  • 10
    「腹の底から笑った!」ママの「アダルト」なクリス…
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中