「外交」で復活した悪童ロッドマン
殿堂入りで見せた意外な涙
引退後のロッドマンは、選手時代の知名度を切り売りする日々を送っていた。パーティーに参加して収入を得るようになり、世間から忘れ去られていった。北朝鮮を訪れるまでは。
北朝鮮で面会した金正恩について「いい奴だ。個人的には友達だ」と語ると、猛烈なバッシングを浴びた。新法王に会おうとバチカンを訪れると、愚か者呼ばわりはさらにひどくなった。
今回の行動は再び注目を集めるための空騒ぎにすぎないのかもしれない。だが11年にバスケットボール殿堂入りを果たしたときのロッドマンを思い返すと、ただの愚か者ではない一面も浮かび上がる。
14シーズンで1万1954リバウンドという輝かしい実績がついに認められた栄光の舞台で、彼は涙を流して謝辞を述べた。周囲に受け入れられたいという願いを秘めながら反抗的な態度を貫いてきた彼の願いが、ようやくかなった瞬間だった。
ロッドマンは受賞スピーチで4人に感謝の言葉をささげた。ピストンズのヘッドコーチだったデーリーとブルズ時代の恩師フィル・ジャクソン、オクラホマ州での大学時代に親代わりになったジェームズ・リッチ、ロサンゼルス・レイカーズのオーナーのジェリー・バスの4人だった。「俺はいい人間のときも悪い人間のときもある。感情的になったり、落ち込んだこともある。彼らはどんなときも俺に語り掛け、手を取ってくれた。目立ちたがり屋でばかなロッドマンではなく、善良な心を持つ人間として扱ってくれた」
スピーチでは自分の悪い面にも触れ、母親に経済的な援助をせず、わが子への義務を果たしていないことを告白した。「むちゃくちゃな生活をしてきた。できることなら、将来は子供たちの良き父親になりたい」
心からの言葉だった。今のところ、その約束が十分果たされているとはいえない。それでも、あの夜のデニス・ロッドマンほど心の内を正直に吐露するスポーツ選手には過去にも未来にも出会えないだろう。
[2013年4月 9日号掲載]