子供向けSNSの危険過ぎる落とし穴
ティーン向けSNSでレイプ事件が発生。「子供市場」を食いあさるIT企業の責任とは
ターゲット 子供は個人情報のガードが緩く親の買い物に与える影響も大きい Mike Harrington/Getty Images
IT企業が魅惑的な市場を前に舌なめずりしている。その市場とは10代、あるいはもっと幼い子供たちだ。
子供は衝動的に物を買う。子供の一声は親の高額な買い物(車や家族旅行の行き先など)にも影響を与える。プライバシーには無頓着で、自分の情報を簡単に人に教えてしまう。
子供を「お客様として扱う」といえば聞こえはいい。だがその過程でIT企業は子供たちを危険にさらしているのではないか。そんな疑念が今、アメリカで強まっている。
きっかけはティーンに人気のSNSアプリ「スカウト」を利用していた子供が、ティーンを装った成人に誘い出されてレイプされた事件が3件続いたことだ。被害に遭ったのは12歳と15歳の少女、そして13歳の少年だった(事件を受けて、ティーン向けサービスは停止された)。
スカウトは07年、携帯電話のGPS機能を利用して、自分がいる場所から徒歩圏内に趣味や好みが似た人がいることを教えてくれる出会い系SNSとしてスタートした。会員は写真入りのプロフィールを作成して、メールでコンタクトを取り合う。
当初、会員になるには18歳以上という年齢制限があったが、実際には多くの未成年者が年齢を偽って登録していた。そこで数年後に深刻な業績不振に陥ったとき、経営陣は新たに13〜17歳向けのサービスを開始した。
シリコンバレーのニュースブログ「テッククランチ」は、スカウトを「未知の誰かと知り合いたい若者や恋人募集中の人」が出会うためのSNSアプリ、と紹介している。
問題の一部はそこにあるのかもしれない。「このアプリはもっと年齢の高い若者向けにつくられていた」と言うのは、子供専用SNS「ユアスフィア」のメアリー・ケイ・ホールCEOだ。「その『売り』は恋愛ごっこ。当然その関係は性的なものになる。それを子供に提供するのは社会的に無責任だ」
フェイスブックも追随?
だがスカウトの狙いは当たった。今年4月には1カ月の新規登録者が100万人を突破し、業績は黒字に転換。大手ベンチャーキャピタルから2200万ドルの投資を得ることも決まった。
こうした流れに追随するかのように、SNS最大手のフェイスブックも現在13歳以上としている年齢制限の引き下げを検討している。だが、ウェブサイトやソフトウエアの安全性をチェックするコモンセンス・メディアのジェームズ・スタイヤーCEOは不安顔だ。
「7歳の子供がフェイスブックで1000人の友達を作る必要があるのか。それに、13歳以上の会員の活動もまともに管理できない会社など信用できない」
確かにどんなサイトでも、性犯罪者を100%締め出すのは不可能かもしれない。だが一定の努力でかなりの成果は挙げられると、サイト上のトラブル監視プログラムを開発するワイアードトラストのペアリー・アフタブCEOは言う。「子供相手に物を売るなら、通常よりもはるかに大きな注意を払う必要がある」