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アメリカ社会黒人差別か正当防衛か、再燃する米人種裁判
一度は釈放された容疑者が逮捕・訴追されたが、有罪判決に持ち込むのは至難の業
正義を求めて マーティン少年を殺したジマーマンの訴追を求めるデモ(ロサンゼルス、3月22日) Jonathan Alcorn-Reuters
米フロリダ州で2月末に黒人の高校生トレイボン・マーティンが射殺された事件をめぐり、同州検察当局は11日、容疑者のジョージ・ジマーマン(28)を殺人容疑で逮捕し、第2級殺人罪で訴追したと発表した。
ジマーマンは事件当初、マーティンを不審者と思い込んで追跡し、もみ合った末に射殺したと供述。警察はいったん彼を拘束したが、正当防衛の発砲を合法とするフロリダ州の「自衛法」が適応されるとして釈放した。しかしマーティンが黒人だったことから、事件は人種差別問題に発展し、全米でジマーマンの訴追を求める抗議運動が高まっていた。
そして今回ついに訴追となったわけだが、AP通信によれば、検察側が有罪判決を勝ち取るのはかなり難しいという。検察側はジマーマンが正当防衛ではなく、故意にマーティンを撃ったと証明しなければならない。そうしなければ、フロリダ州の自衛法が適応されないと主張できないからだ。
最初の供述と通報記録が鍵に
ジマーマンは11日、検察当局が訴追を発表した直後に自ら出頭したが、無罪を主張する見通しだ。「彼は公正な裁判を受けられるか、公正な形で自分の主張を聞いてもらえるか懸念している」と、担当弁護士のマーク・オマラは語っている。「彼はいま、大きな憎悪の標的となっている。そうした憎しみが早く収まるよう願いたい。彼には身を守る権利があるし、判事と陪審員の前で審理される権利もある」
刑事訴訟のベテラン弁護士ブルース・フライシャーいわく、ジマーマンが最初に事件を警察へ通報した際に言ったことと、警察での最初の供述が、裁判の行方を左右する鍵になる。自分の命が危ないとジマーマンが信じていたと示すものが、弁護の核になるだろうと、彼はブルームバーグ・ビジネスウィーク誌に語った。「正当防衛は法で認められており、フロリダ州の自衛法はさらにそれを強化するものだ」
有罪判決が下された場合は無期懲役になる可能性もあるが、実際はかなり望み薄だという。過失致死容疑なら誤って殺したケースも対象になり、たいがい15年程度の実刑が課される。
しかし今回の場合、殺人容疑では「陪審員の前で審理される前に、判事に棄却される可能性が非常に高い」と、地元のある弁護士はAP通信に語った。