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アフガニスタンコーラン焼却事件が招いたアメリカへの憎悪の炎
軽率な行為はアフガニスタン国民の怒りを買い、両国の協調関係を破壊し、米兵をさらなる危険にさらす
泥沼 コーラン焼却に抗議する人々。一カ月後の3月下旬には米兵が乱射事件を起こす Parwiz-Reuters
アフガニスタンの惨劇が止まらない。バグラム米空軍基地でイスラム教の聖典コーランが焼却された先月以降、米軍や外国軍を狙った報復行為が相次いでいる。激しい反米デモが1週間続いて事態は収束するかに見えたが、2月27日には同国東部ジャララバードのNATO軍基地が併設された空港で、車を使った自爆攻撃が発生した。
保守的な途上国で、イスラムの教えが厳格に守られているアフガニスタンのような国では、神を冒とくするのは最も怒りを買う行為だ。今回のコーラン焼却事件にも国民は激高し、反米デモの最中に約30人のアフガニスタン人が死亡。4人の米兵が至近距離から射殺される事件も起きた。ジャララバードで起きた自爆テロでは9人が死亡し、NATO軍兵士4人を含めた19人が負傷。アフガニスタンの反政府武装勢力タリバンが、「米軍がコーランを冒とくした報復だ」という声明を発表した。
こうした犠牲者以外に、コーラン焼却はさらに大きなものにダメージを与えた。アメリカとアフガニスタンのパートナーシップそのものだ。コーランが焼き捨てられたというニュースが報じられると直ちにタリバンは国民に奮起を促し、兵士や警察官にアメリカや同盟国の駐留兵を攻撃するよう呼び掛けた。
それに触発されたのかどうか、米兵に対する攻撃が相次いだ。27日に起きた自爆テロ現場から程近いアフガニスタン東部では、1人のアフガニスタン兵が米兵2人を射殺。25日には首都カブールの厳重に警備された内務省の中で、米兵2人がデスクに座ったまま後頭部を撃たれて死亡した。26日には北部にある米軍基地に手榴弾が投げ込まれ、教官7人が負傷した。
報復への協力望む一般人
タリバンや過激な宗教指導者は、コーラン焼却を受けて国民の間に噴き出した反米感情を喜んでいる。1月にも、タリバン兵士とみられる遺体に米兵が放尿するショッキングな映像がネット上に流出。アフガニスタンの文化や宗教が冒とくされていると、人々の怒りを買ったばかりだ。タリバンのある幹部は匿名を条件にこう語った。「こうした事件が起きるたびに、一般の人々が、報復に協力したいがどうすればいいかと私たちの元を訪ねてくる」
アフガニスタン政府高官は、アメリカとの協調関係に亀裂が入ったことに動揺を隠せない様子だ。「たくさんの犠牲者を出した米軍と、アメリカの税金に私たちは助けられてきた。なのにこうした事件のせいで、これまで築かれてきたアメリカの好印象が台無しになる」
その痛手は米兵一人一人の身にも跳ね返ってくる。米軍は14年末までにアフガニスタンから段階的に撤退していくが、駐留を続ける米兵は、自らが訓練してきたアフガニスタン兵に今まで以上に頼ることになる。アメリカの支援は最小限にして、自ら国内の武装勢力に立ち向かえるようアフガニスタンの治安部隊を指導する新たな任務も始まった。しかし、治安部隊に配備される米軍の顧問や教官が少なくなれば、反米感情を抱いたアフガニスタン兵から攻撃を受けやすくなるかもしれない。
これは看過できない大問題だ。コーラン焼却事件が起こる前からアメリカとNATOは、外国人の顧問とアフガニスタン兵の間に生じる文化的、個人的な敵対意識を危惧してきた。アフガニスタン兵が欧米同盟国の人間に発砲する事件が頻発しているのは、両者の緊張関係が高まっている表れだ。
壊れた信頼関係を修復するのは、タリバンを攻撃するより難しいかもしれない。
[2012年3月14日号掲載]