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アメリカ政治シカゴ落選を喜ぶ保守派の「品格」
2016年夏季五輪の招致失敗にアメリカの右派が大喜びしたのは、オバマたたきの口実を見つけたからだ
最後の切り札 コペンハーゲンで開かれたIOC総会で招致演説を行ったオバマ米大統領夫妻(10月2日) Reuters
有力な政治ブログ「トーキング・ポインツ・メモ」は、2016年夏季五輪の開催地を決める投票で、IOC(国際オリンピック委員会)がシカゴを落選させたことにアメリカの右派の評論家たちは大喜びしたと報じた。保守系のウイークリー・スタンダード誌の編集者が書いたあるウエブ記事によれば、結果が発表された時に「(編集部では)歓声が沸き起こった」という。
私自身は、バラク・オバマ米大統領がオリンピック招致問題に関わるのは間違いだと思っていた。攻撃的な右派がそれをいいネタにしようとすると考えたからだ。ただし、五輪を開催することでシカゴが恩恵を享受するのは確かだし、アメリカ全体にとってもいい話のはずだ。ではなぜ右派は落選の知らせに歓声を上げたのか。
答えは簡単だ。彼らにとって、アメリカという国や一般国民のことはどうでもいいのだ。彼らが気にしているのは特権的な立場、政治的な影響力、そして個人的な収入だ。それを左右するのは、民主党をこき下ろしたり、どんな手段を使ってでも共和党を復権させようという試みだ。今ならそれは、オバマをバッシングする口実を見つけること。IOCの決定がオバマの失点に見えるのなら、中西部で雇用が減ったり、アメリカの評判が下がることになってもかまわないのだ。
辛口すぎる? では、これまでに右派の個人あるいは団体が、自らの未熟で利己的な行動について謝罪の意を表したことがあるだろうか。ウイークリー・スタンダード誌は、シカゴ落選が決まった際に歓声を上げた編集部の様子を伝えたウェブ記事を削除した。しかし、それは反省したからではなく、ただ恥ずかしいと思ったからだ。
口の達者な保守派の人気司会者ラッシュ・リンボーも、公然とこう語った。「私の機嫌がよさそうなことを不快に思っている人たちがいる。確かに私は機嫌がいい。否定はしない。喜びでいっぱいなんだ」
この先、保守派の論客ウィリアム・クリストルやリンボーが自分たちの体をアメリカ国旗で包み、いかに彼らがアメリカを愛しているか雄弁に語るところを見たり聞いたりした時には、思い出したほうがいい。アメリカが敗れて、彼らは「喜びでいっぱい」だったことを。
[米国東部時間2009年10月05日(月)08時52分更新]
Reprinted with permission from Stephen M. Walt's blog, 06/10/2009. © 2009 by Washingtonpost.Newsweek Interactive, LLC.