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ファーストレディーオバマ夫人ミシェル、短パンの波紋
脚見せ 短パン姿で娘マリア(左)と空港に降り立つミシェル(8月16日) Larry Downing-Reuters
休暇でグランドキャニオンを訪れたミシェル・オバマ米大統領夫人が、エアフォースワンから短パン姿で降り立った。興味深かったのはメディアの報道ぶりだ。
NBCの番組『トゥデー』は、ファーストレディーにはふさわしくない格好だとの声も一部から上がっていると指摘。だが引用したのは賛成派の発言のほかは、ワシントン・ポスト紙のファッション担当記者の「判断に迷う」とのコメントくらいのものだった。
ニュースサイトのエグザミナー・ドット・コムはミシェルを素敵だとたたえ、「メディアや国民の一部」が腹を立てるのは残念だと書いた。しかしメディアや国民の一部とは一体、誰なのか?
有力政治ブログのハフィントン・ポストは「ゴージャスな脚」をさらした点を非難されるかもしれないとして読者アンケートを実施。80%以上が短パンはオーケーとしながらも、その3分の1が短過ぎると考えた。ロサンゼルス・タイムズ紙のブログは「激怒した人もいる」と書き、証拠としてエグザミナーにリンクを張った。
そこで記者が捜したところ、アメリカ人がミシェルの短パン姿に怒ったという具体的な証拠はどこにも見当たらなかった。なのにメディアや多くのブログはこぞって、彼女の洋服選びに腹を立てる者がいると書く。
ミシェルの姿に少しショックを受けたメディア関係者が、それを報じたいと考えたということは十分にあり得る。ではなぜ「ファーストレディーが短パンをはくのは異例のことだ」と堂々と伝えず、存在すらはっきりしない「反対論者」の陰に隠れるのか?
「批判する人もいる」と書くことで、メディアは自分の「勇気」を誇示できる。そうやって話を振れば、「ミシェルには好きな服を着る権利がある」と、どうでもいいような擁護論を展開してミシェルに救いの手も差し伸べられる。
しかしミシェルにとっては大きなお世話。短パンをはくのに私たちの許可など要らないはずだ。
[2009年9月 2日号掲載]