巨大隕石の衝突が「生命を進化」させた? 地球史初期の新事実
A New View of Earth's Past
「隕石=絶滅」ではない
研究チームの分析によれば、S2の衝突後、鉄やリンをエネルギー源とする単細胞生物の数が急増したという。
隕石の衝撃は深海をかき回し、浅水域に鉄分を送り込んだと考えられる。一方、リンは隕石自体と、陸で加速する風化や浸食によってもたらされた。この栄養分の流入は、地球の初期生命の在り方を理解する上で重要なカギだ。
「代謝に鉄を利用するのは、その他の多くの元素より、エネルギー源として好都合だ。鉄を得られるようになり、鉄代謝が優位になったのだろう」と、ドラボンは話す。
大量絶滅を連想しがちな隕石の衝突が、原始生命体の生育や多様化に重要な役割を果たした──そんな可能性を示唆するドラボンらの研究は、隕石衝突と生命の進化の関係をめぐる従来の認識に疑問を投げかける。S2の衝突が地球表層環境に与えた影響と、初期生命における変化を直接的に関連付けた今回の研究は、太古の地球の理解につながる新たな道を開いている。
「当時の地球には巨大隕石が頻繁に衝突していたのだから、これは重要な点だ」と、ドラボンは指摘する。「隕石の衝突は大惨事と見なされることが多い。その最たる例が、恐竜の絶滅だ。だが私たちの研究が示すように、隕石衝突はある程度、初期の生命の進化に幸いしたのかもしれない」