【密着ルポ】オープンAIのサム・アルトマンは、オッペンハイマーに匹敵する超人か? 密着して見えてきた、生成AI最前線に君臨する男の素顔と頭の中
THE REAL SAM ALTMAN
アニーは番組を公開し、兄たち、特にサムにシェアしてほしいと頼んだ。サムは弟たちのキャリアに貢献していた(ジャックが創業したスタートアップ「ラティス」はYCの起業支援を受けた)。「『リンクをツイートするだけでいいの。そうしてくれたら助かる。自分が出演した妹のポッドキャストをシェアしたくないの?』って言った」。だが「ジャックとサムは、そういうことは自分たちのビジネスには合わないって」。
アニーはアキレス腱を負傷して薬局の仕事を辞めた。けがはなかなか治らず、サムと母親に金銭的援助を求めたが断られた。「ちょうど初めてパパ活サイトに出た頃。私は途方に暮れ、自暴自棄になり、混乱して悲しみに打ちのめされていた」
サムはずっとアニーの大好きな兄だった。寝るときにサムが本を読んでくれると、彼女は自分が理解され、愛されていると感じ、とても誇らしかったものだ。それなのに「なぜ私を助けてくれないの? 彼らには大して負担にならないのに」。
20年5月、彼女はハワイ島に転居。農場に居候して仕事を手伝うようになって間もなく、サムから父親の遺灰で作ったメモリアルダイヤモンドを送りたいから住所を教えてくれとメールが来た。「1つ5000ドルかけて、パパじゃなく自分の思い付きでそんなものを作って、それを私に送りたいだなんて。食費として300ドル送ってくれたらいいのに」
その後、サムとは疎遠に。サムから家を買ってやると言われたが、アニーは支配されたくない。彼女はこの3年間「現実とバーチャルの両方で」売春をして自活しているという。性的コンテンツの有料投稿が多い会員制SNS「オンリーファンズ」でポルノを公開。一方、インスタグラムストーリーズに相互扶助について投稿し、資金援助を必要とする人々と資金がある人々を結び付けようとしている。
サムとアニーは光と影だ。サムと交流のある人物によれば、彼は世界初のトリリオネア(1兆ドル長者)になると冗談を言ったらしい。盗んだデータとデイジーチェーン接続(数珠つなぎ)したGPU(グラフィック処理装置)を使って人間の知能を複製し超越するソフトウエアを構築しようと熱心に取り組んでいる。
「AIはきれいごとじゃない」
昨年6月22日、アルトマンはタキシードに身を包んで、パートナーのオリバー・マルヘリンとホワイトハウスの公式晩餐会に出席した。
彼は90年代のタイムトラベル映画の登場人物を思わせた。絶大な影響力の持ち主にしては小柄で若かった。それでも彼はおおむねうまくやっていた。アルトマンのCEO就任以来、オープンAIはNPOっぽさが薄れたばかりか、以前ほどオープンではなくなった。トレーニングデータとソースコードを公開して自社の技術の大半を誰でも分析・拡大できるようにしなくなった。「人類の最大利益のため」に働くのをやめたのだ。