最新記事
生成AI

AIの未来を担う男、アルトマンの「正体」ー彼に人類の未来を託して本当にいいのか?

WILL ALTMAN DELIVER?

2024年2月1日(木)12時02分
サム・ポトリッキオ(ジョージタウン大学教授、本誌コラムニスト)

しかしアルトマンを批判する人々に言わせれば、彼はオープンAIを独占企業のように運営し、設立時の目標とは正反対のものをひたすら追いかけている。

アルトマンは2015年に、グーグルがディープマインドを買収した余波の中、イーロン・マスクとオープンAIを共同設立した。

グーグルがAIの世界を掌握する未来を懸念した2人は、上場企業が追い求めなければならない利益ではなく、世界の利益のために働きたいと考えた。

しかし、やがてアルトマンは会社の全権を握り、投資家の数十億ドルの資金を追い求めるようになった。

今回の奇妙な追放劇とアルトマンがさっそうと再登板した理由について最も深い洞察は、私が勤めるジョージタウン大学のウェブサイトに掲載された地味な学術論文に求めることができる。

論文の共著者で著名なテクノロジー学者のヘレン・トナーは、次のように書いている。

「オープンAIは、著作権問題やデータ注釈者の労働条件、ユーザーが安全制御のルールを回避する『脱獄』に対する脆弱性など、チャットGPTとGPT-4の公開に関連して多くの安全性と倫理上の問題でも批判を浴びている......これとは違って、AIの主な競争相手であるアンソロピックは、安全性を重視する企業として認められたいという願望が一貫して見てとれる」

240206p18_INT_05.jpg

トナーが共同執筆した論文「意図を解読する:人工知能とコストの高いシグナル」 NO CREDIT

トナーはアルトマンを解任した理事の1人だ(彼のCEO復帰後に刷新された理事会には残っていない)。企業の取締役がライバル企業の取り組みを公然と宣伝するのだから、表面的には奇妙に思える。

240206p18_INT_03.jpg

ヘレン・トナー JEROD HARRIS/GETTY IMAGES FOR VOX MEDIA

「王様は裸だ」と叫ばれても

ただし、そこにはさらに深い人間関係がある。

トナーが、オープンAIの理念の中核である安全性で彼らを凌駕していると指摘したアンソロピックのCEOは、オープンAIの創業直後からアルトマンと共に働いていた。

彼、ダリオ・アモデイがオープンAIを辞めた理由は、安全に関する方向性をめぐる意見の相違と、商業的になりすぎることへの失望だった。

アモデイはアルトマンの追放を画策したが失敗し、複数の幹部と共に会社を去って21年にアンソロピックを設立した。トナーの論文は、要するに「王様は裸だ」と叫んでいる。

240206p18_INT_04.jpg

アンソロピックのアモデイCEO  KIMBERLY WHITE/GETTY IMAGES FOR TECHCRUNCH

あわせて読みたい
ニュース速報

ビジネス

FRB当局者、金利巡り慎重姿勢 関税措置で物価上振

ビジネス

再送-インタビュー:トランプ関税、国内企業に痛手な

ワールド

原油先物5週間ぶり高値、トランプ氏のロシア・イラン

ビジネス

トランプ関税で目先景気後退入り想定せず=IMF専務
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:引きこもるアメリカ
特集:引きこもるアメリカ
2025年4月 8日号(4/ 1発売)

トランプ外交で見捨てられ、ロシアの攻撃リスクにさらされるヨーロッパは日本にとって他人事なのか?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる唯一の方法
  • 2
    ガムから有害物質が体内に取り込まれている...研究者が警鐘【最新研究】
  • 3
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?
  • 4
    ロシア空軍基地へのドローン攻撃で、ウクライナが「…
  • 5
    磯遊びでは「注意が必要」...6歳の少年が「思わぬ生…
  • 6
    自らの醜悪さを晒すだけ...ジブリ風AIイラストに「大…
  • 7
    3500年前の粘土板の「くさび形文字」を解読...「意外…
  • 8
    メーガン妃のパスタ料理が賛否両論...「イタリアのお…
  • 9
    8日の予定が286日間に...「長すぎた宇宙旅行」から2…
  • 10
    なぜ「猛毒の魚」を大量に...アメリカ先住民がトゲの…
  • 1
    テスラの没落が止まらない...株価は暴落、業績も行き詰った「時代遅れ企業」の行く末は?【アニメで解説】
  • 2
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?
  • 3
    「一夜にして死の川に」 ザンビアで、中国所有の鉱山ダムから有毒の水が流出...惨状伝える映像
  • 4
    【独占】テスラ株急落で大口投資家が本誌に激白「取…
  • 5
    800年前のペルーのミイラに刻まれた精緻すぎるタトゥ…
  • 6
    ロシア空軍基地へのドローン攻撃で、ウクライナが「…
  • 7
    ガムから有害物質が体内に取り込まれている...研究者…
  • 8
    一体なぜ、子供の遺骨に「肉を削がれた痕」が?...中…
  • 9
    「この巨大な線は何の影?」飛行機の窓から撮影され…
  • 10
    現地人は下層労働者、給料も7分の1以下...友好国ニジ…
  • 1
    中国戦闘機が「ほぼ垂直に墜落」する衝撃の瞬間...大爆発する機体の「背後」に映っていたのは?
  • 2
    「テスラ時代」の崩壊...欧州でシェア壊滅、アジアでも販売不振の納得理由
  • 3
    「さようなら、テスラ...」オーナーが次々に「売り飛ばす」理由とは?
  • 4
    「一夜にして死の川に」 ザンビアで、中国所有の鉱山…
  • 5
    テスラ失墜...再販価値暴落、下取り拒否...もはやス…
  • 6
    「今まで食べた中で1番おいしいステーキ...」ドジャ…
  • 7
    市販薬が一部の「がんの転移」を防ぐ可能性【最新研…
  • 8
    テスラ販売急減の衝撃...国別に見た「最も苦戦してい…
  • 9
    テスラの没落が止まらない...株価は暴落、業績も行き…
  • 10
    【クイズ】アメリカを貿易赤字にしている国...1位は…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中