最新記事

7割当たってる!?「猫語」翻訳AIアプリで、おうちのツンデレ姫とおしゃべりしよう

Can AI Talk “Cat”

2023年12月15日(金)08時17分
エル・ハント(ジャーナリスト)

アマゾンのアレクサの開発チームの一員だったサンチェスは、猫のニーズが分かるアレクサのようなデバイスを作れないかと考えた。

当初は猫の首に着ければリアルタイムで人間の言葉に翻訳してくれる装置を構想していたが、1年ほど試行錯誤を続けた末、今の技術ではこの用途に合った軽量で長持ちする電池は入手できないことが分かった。

にゃんトークは妥協の産物だ。

サンチェスは技術者チームと共に、自分が飼っている5匹の猫を実験台にして特定の鳴き声を特定の意図に結び付けるようAIを訓練した。

にゃんトークは猫の11の「一般的な意図」を区別できる。

実際には、「もっと多くの意図があるはずだ」と、サンチェスは言う。

「猫は(多種多様な内容を)音声でとても巧みに表現できる」

サンチェスらが猫の鳴き声を定義・分類する際には、シェッツの研究が大いに役立った。

猫の音声は多岐にわたる。

同じニャーでも微妙なトーンの違いがあるし、喉をゴロゴロ鳴らす音も出せば、うめき声や悲鳴も発する。シェッツが「ミャオジック」と名付けたように、音楽的な鳴き声で意思表示することもある。

猫が飼い主に何らかのメッセージを発信しているのは疑う余地がない。

ただ、にゃんトークがそれを人間の言葉に「翻訳」できると称していることには疑問符が付く。

サンチェスは猫が言語や語彙を持っているような言い方は「厳密には正しくない」と認めた上で、「しかし」と付け加える。

猫には特定の状況で「一貫して発する音声があり、どの猫も普遍的に使う」。それはいわば猫語のようなものだというのだ。

飼い主のエゴをくすぐる

サンチェスいわく、にゃんトークの翻訳は平均7割方当たっている。

ゴロゴロ音については「99.9%」の精度だという。

もっともゴロゴロ喉を鳴らす猫がご満悦なのはアプリがなくても分かる。

猫の社会的行動に詳しい動物行動学者のミケル・デルガドによると、猫は鳴き声だけでなく、表情やしぐさ、におい信号でもコミュニケーションを行うが、その多くは人間には感知できない。

最近の研究によると、猫同士は276種の表情で思いを伝え合うが、人間のそれは44種にすぎないという。

「猫が生きている世界は人間の世界とは質的に異なる」と、デルガドは言う。

あわせて読みたい
ニュース速報

ビジネス

米新規失業保険申請は6000件減の21.3万件、4

ビジネス

ECB、12月にも利下げ余地 段階的な緩和必要=キ

ワールド

イスラエルとヒズボラ、激しい応戦継続 米の停戦交渉

ワールド

ロシア、中距離弾道ミサイル発射と米当局者 ウクライ
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:超解説 トランプ2.0
特集:超解説 トランプ2.0
2024年11月26日号(11/19発売)

電光石火の閣僚人事で世界に先制パンチ。第2次トランプ政権で次に起きること

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本人はホームレスをどう見ているのか? ルポに対する中国人と日本人の反応が違う
  • 2
    Netflix「打ち切り病」の闇...効率が命、ファンの熱が抜け落ちたサービスの行く末は?
  • 3
    「1年後の体力がまったく変わる」日常生活を自然に筋トレに変える7つのヒント
  • 4
    【ヨルダン王室】生後3カ月のイマン王女、早くもサッ…
  • 5
    NewJeans生みの親ミン・ヒジン、インスタフォローをす…
  • 6
    元幼稚園教諭の女性兵士がロシアの巡航ミサイル「Kh-…
  • 7
    ウクライナ軍、ロシア領内の兵器庫攻撃に「ATACMSを…
  • 8
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り…
  • 9
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参…
  • 10
    若者を追い込む少子化社会、日本・韓国で強まる閉塞感
  • 1
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」に警鐘【最新研究】
  • 2
    自分は「純粋な韓国人」と信じていた女性が、DNA検査を受けたら...衝撃的な結果に「謎が解けた」
  • 3
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り捨てる」しかない理由
  • 4
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参…
  • 5
    朝鮮戦争に従軍のアメリカ人が写した「75年前の韓国…
  • 6
    アインシュタイン理論にズレ? 宇宙膨張が示す新たな…
  • 7
    沖縄ではマーガリンを「バター」と呼び、味噌汁はも…
  • 8
    クルスク州の戦場はロシア兵の「肉挽き機」に...ロシ…
  • 9
    メーガン妃が「輝きを失った瞬間」が話題に...その時…
  • 10
    中国富裕層の日本移住が増える訳......日本の医療制…
  • 1
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」に警鐘【最新研究】
  • 2
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参加で「ネットの自由」を得た兵士が見ていた動画とは?
  • 3
    外来種の巨大ビルマニシキヘビが、シカを捕食...大きな身体を「丸呑み」する衝撃シーンの撮影に成功
  • 4
    朝鮮戦争に従軍のアメリカ人が写した「75年前の韓国…
  • 5
    自分は「純粋な韓国人」と信じていた女性が、DNA検査…
  • 6
    北朝鮮兵が味方のロシア兵に発砲して2人死亡!? ウク…
  • 7
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り…
  • 8
    足跡が見つかることさえ珍しい...「超希少」だが「大…
  • 9
    モスクワで高層ビルより高い「糞水(ふんすい)」噴…
  • 10
    ロシア陣地で大胆攻撃、集中砲火にも屈せず...M2ブラ…
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中