最新記事
AI

AIはもうここまで生活と仕事を変えた...いずれ奪われるこれほど多くの職種

LIFE-CHANGING AI

2023年6月15日(木)13時30分
デービッド・H・フリードマン(科学ジャーナリスト)
AI

ANDRIY ONUFRIYENKO/GETTY IMAGES

<医療や介護、電話セールス、法律相談、雇用......。AI革命がもたらすのは明るい未来か暗い未来か>

近年のAI(人工知能)の進歩は、専門の科学者や技術者の予想も超えている。「数年前には、こんなに早く、これほどの進歩が実現するとは想像していなかった」と、AIの実用化について研究しているフロリダ大学のチョー・チアン助教は言う。

とりわけ最近は、オープンAI社の「チャットGPT」、マイクロソフトの「Bing(ビング)」、グーグルの「Bard(バード)」など、目を見張るほど高い能力を持った対話型AIプログラムが相次いで送り出されたことにより、AIへの興奮と懸念が高まっている。

AIは今後、経済に大きな影響を及ぼし、さらには教育から娯楽、そして医療まで、人々の暮らしのほぼ全ての側面を様変わりさせると予想されている。その過程で、仕事の生産性が高まる人がいる一方で、職を失う人も出てくるだろう。

「今の時点でAIの能力は魔法のように思えるかもしれないが、当たり前に感じられる時代がすぐにやって来る」と、調査会社フォレスター・リサーチでAIを専門としているアナリストのローワン・カランは言う。「AIがもたらす変化の全容は、まだ私たちには見えていない」

AIがどんな変化をもたらすかを正確に予測できる人はいないが、その変化が大規模で広範囲に及ぶという点では、専門家の見方が一致している。具体的に紹介すると......。

■医療の改善

4月に英科学誌ネイチャーに発表された研究によると、心臓エコー検査の読影に関して、AIプログラムは人間の技師と同等、もしくはそれ以上の成果を上げたという。

同様の研究結果はほかにもある。患者の検査画像、採取した組織や細胞のサンプル、医療記録を参照して癌などの病気を発見することに関して、AIのスキルが既に人間と肩を並べ、場合によっては人間を凌駕していることを示す研究が、相次いで発表されている。

AIは、医師と患者のやりとりを記録して要約したり、膨大な文献を調べて薬の飲み合わせなどの重要な情報を明らかにしたりすることにもたけている。

ヒポクラティックAI社が開発した新しいAIシステムは、患者とのやりとりを任せることを目的としたプログラムだ。入院患者の気持ちになって温かみのある会話もできるという。このプログラムは、看護学、栄養学、泌尿器科学など100分野以上の資格認定試験で、多くの人間の専門家を上回る成績を上げている。

この先、こうしたAIプログラムの性能はさらに向上し、コストは低下するだろう。その一方で、医師不足が解消される見通しは立っていない。このような状況の下、未来の医療の現場ではAIの活用がいっそう広がりそうだ。

SDGs
使うほど脱炭素に貢献?...日建ハウジングシステムが「竹建築」の可能性に挑む理由
あわせて読みたい
ニュース速報

ビジネス

豊田織機の非公開化報道、トヨタ「一部出資含め様々な

ビジネス

中国への融資終了に具体的措置を、米財務長官がアジア

ビジネス

ベッセント長官、日韓との生産的な貿易協議を歓迎 米

ワールド

アングル:バングラ繊維産業、国内リサイクル能力向上
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:独占取材 カンボジア国際詐欺
特集:独占取材 カンボジア国際詐欺
2025年4月29日号(4/22発売)

タイ・ミャンマーでの大摘発を経て焦点はカンボジアへ。政府と癒着した犯罪の巣窟に日本人の影

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 2
    中国で「ネズミ人間」が増殖中...その驚きの正体とは? いずれ中国共産党を脅かす可能性も
  • 3
    トランプ政権の悪評が直撃、各国がアメリカへの渡航勧告を強化
  • 4
    健康寿命は延ばせる...認知症「14のリスク要因」とは…
  • 5
    アメリカ鉄鋼産業の復活へ...鍵はトランプ関税ではな…
  • 6
    ロシア武器庫が爆発、巨大な火の玉が吹き上がる...ロ…
  • 7
    関税ショックのベトナムすらアメリカ寄りに...南シナ…
  • 8
    ロケット弾直撃で次々に爆発、ロシア軍ヘリ4機が「破…
  • 9
    使うほど脱炭素に貢献?...日建ハウジングシステムが…
  • 10
    パニック発作の原因の多くは「ガス」だった...「ビタ…
  • 1
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 2
    「生はちみつ」と「純粋はちみつ」は何が違うのか?...「偽スーパーフード」に専門家が警鐘
  • 3
    「スケールが違う」天の川にそっくりな銀河、宇宙初期に発見される
  • 4
    【クイズ】「地球の肺」と呼ばれる場所はどこ?
  • 5
    女性職員を毎日「ランチに誘う」...90歳の男性ボラン…
  • 6
    教皇死去を喜ぶトランプ派議員「神の手が悪を打ち負…
  • 7
    『職場の「困った人」をうまく動かす心理術』は必ず…
  • 8
    自宅の天井から「謎の物体」が...「これは何?」と投…
  • 9
    「100歳まで食・酒を楽しもう」肝機能が復活! 脂肪…
  • 10
    トランプ政権はナチスと類似?――「独裁者はまず大学…
  • 1
    【話題の写真】高速列車で前席のカップルが「最悪の行為」に及ぶ...インド人男性の撮影した「衝撃写真」にネット震撼【画像】
  • 2
    健康寿命を伸ばすカギは「人体最大の器官」にあった...糖尿病を予防し、がんと闘う効果にも期待が
  • 3
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?
  • 4
    【心が疲れたとき】メンタルが一瞬で “最…
  • 5
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる…
  • 6
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」では…
  • 7
    間食はなぜ「ナッツ一択」なのか?...がん・心疾患・抜…
  • 8
    自らの醜悪さを晒すだけ...ジブリ風AIイラストに「大…
  • 9
    北朝鮮兵の親たち、息子の「ロシア送り」を阻止する…
  • 10
    【クイズ】世界で最も「半導体の工場」が多い国どこ…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中