AIはもうここまで生活と仕事を変えた...いずれ奪われるこれほど多くの職種

LIFE-CHANGING AI

2023年6月15日(木)13時30分
デービッド・H・フリードマン(科学ジャーナリスト)

有望な新薬候補を探すためにAIを利用し始めている製薬会社もある。精神疾患を専門とする製薬研究会社のサイコジェニックスでは、マウスを使った実験の結果を観察するために、人間の代わりにAIを活用するようにした。

これにより、新薬候補のテストの正確性を向上させ、コストを10分の1に抑えることができている。テストに要する期間も、それまでは平均5年を要していたが、3年に短縮できた(ただし、同社によれば、テストの結果は全て人間の専門家が確認するとのことだ)。

サイコジェニックスのAIが見つけた新薬候補の4種類が既に、臨床試験段階に進んでいる。この中で、有望な統合失調症治療薬は今年、臨床試験の第3相に進む予定だ。

■高齢者のケア

高齢者介護の現場では、ロボットへのニーズが極めて大きい。高齢者の孤独と孤立は見過ごせない問題になりつつある。家族だけでは高齢者に十分なケアを提供できず、その一方で高齢者介護の人手も不足していて、コストも増大しているのが現実なのだ。

既に介護ロボットがそうした人手不足を埋め合わせ始めている。ロボットが高齢者をモニタリングし、動画を家族に送ったり、高齢者のために小さな物を取ってきたり、さまざまな質問に回答したり、予定などの注意喚起をしたりする役割を果たしているのだ。高齢者とおしゃべりして、子供の頃の思い出話を引き出そうとするロボットも登場している。

チャットGPTのように円滑な会話ができるAIプログラムに限らず、ロボットが人間と関わる能力はさらに目覚ましい進歩を遂げるだろう。「(最新のAIを搭載したロボットは)高齢者が引き出しを引っかき回して何かを探しているケースと、引き出しを開けることそのものに難儀しているケースを識別できる」と、フォレスターのカランは言う。

■電話セールスも法律相談も

自動音声電話はこれまで迷惑な存在だったが、次に電話が鳴るときは相手が人間か機械か判別できないかもしれない。ニューヨーク大学ビジネススクールのロバート・シーマンズ准教授によれば、電話によるテレマーケティングはAIの得意分野だ。

シーマンズらが今後数年でAIが優位に立つタスクの種類を調べたところ、テレマーケティングがトップだった。「販売という極めて特殊な1つのタスクを伴う仕事で、通常は『台本』が用意されている」ので、AIには簡単なのだという。

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

アングル:フィリピンの「ごみゼロ」宣言、達成は非正

ワールド

イスラエル政府、ガザ停戦合意を正式承認 19日発効

ビジネス

米国株式市場=反発、トランプ氏就任控え 半導体株が

ワールド

ロシア・イラン大統領、戦略条約締結 20年協定で防
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:トランプ新政権ガイド
特集:トランプ新政権ガイド
2025年1月21日号(1/15発売)

1月20日の就任式を目前に「爆弾」を連続投下。トランプ新政権の外交・内政と日本経済への影響は?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「拷問に近いことも...」獲得賞金は10億円、最も稼いでいるプロゲーマーが語る「eスポーツのリアル」
  • 2
    【クイズ】世界で1番マイクロプラスチックを「食べている」のは、どの地域に住む人?
  • 3
    轟音に次ぐ轟音...ロシア国内の化学工場を夜間に襲うウクライナの猛攻シーン 「ATACMSを使用」と情報筋
  • 4
    【クイズ】次のうち、和製英語「ではない」のはどれ…
  • 5
    「搭乗券を見せてください」飛行機に侵入した「まさ…
  • 6
    ティーバッグから有害物質が放出されている...研究者…
  • 7
    ドラマ「海に眠るダイヤモンド」で再注目...軍艦島の…
  • 8
    「ウクライナに残りたい...」捕虜となった北朝鮮兵が…
  • 9
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参…
  • 10
    雪の中、服を脱ぎ捨て、丸見えに...ブラジルの歌姫、…
  • 1
    ティーバッグから有害物質が放出されている...研究者が警告【最新研究】
  • 2
    体の筋肉量が落ちにくくなる3つの条件は?...和田秀樹医師に聞く「老けない」最強の食事法
  • 3
    睡眠時間60分の差で、脳の老化速度は2倍! カギは「最初の90分」...快眠の「7つのコツ」とは?
  • 4
    メーガン妃のNetflix新番組「ウィズ・ラブ、メーガン…
  • 5
    轟音に次ぐ轟音...ロシア国内の化学工場を夜間に襲う…
  • 6
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参…
  • 7
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 8
    「拷問に近いことも...」獲得賞金は10億円、最も稼い…
  • 9
    ドラマ「海に眠るダイヤモンド」で再注目...軍艦島の…
  • 10
    【クイズ】世界で1番マイクロプラスチックを「食べて…
  • 1
    ティーバッグから有害物質が放出されている...研究者が警告【最新研究】
  • 2
    大腸がんの原因になる食品とは?...がん治療に革命をもたらす可能性も【最新研究】
  • 3
    体の筋肉量が落ちにくくなる3つの条件は?...和田秀樹医師に聞く「老けない」最強の食事法
  • 4
    夜空を切り裂いた「爆発の閃光」...「ロシア北方艦隊…
  • 5
    インスタント食品が招く「静かな健康危機」...研究が…
  • 6
    ロシア軍は戦死した北朝鮮兵の「顔を焼いている」──…
  • 7
    TBS日曜劇場が描かなかった坑夫生活...東京ドーム1.3…
  • 8
    「涙止まらん...」トリミングの結果、何の動物か分か…
  • 9
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 10
    「戦死証明書」を渡され...ロシアで戦死した北朝鮮兵…
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中