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「犬は飼い主に忠誠心をもつ」は間違い 研究で判明した「犬が本当に考えていること」

2022年11月26日(土)18時40分
鹿野正顕(ドッグトレーナー、スタディ・ドッグ・スクール代表) *PRESIDENT Onlineからの転載
飼い主とハイタッチをする犬

ハイタッチをする犬でも飼い主に忠誠心をもたない!? Zorica Nastasic - iStockphoto


犬と接するときはどんなことに気を付けるべきか。ドッグトレーナーの鹿野正顕さんは「犬を擬人化してはいけない。あくまで動物であり、常に本能で動いている。人間側の一方的な思いや価値観で犬と接してはいけない」という――。

※本稿は、鹿野正顕『犬にウケる飼い方』(ワニブックスPLUS新書)の一部を再編集したものです。

犬は本能を理性でコントロールできない

犬という動物を知るうえで、大前提として知っておきたいのは、五感の感覚が人間とはまったく違うこと。そして脳の働きも人間とはまるで違うということです。

これは当たり前のことなのですが、ともすれば、犬と家族同様に暮らしていくうちに、犬も人と同じようにものを見たり聞いたりし、人と同じような感情を持つように思い込んでしまう方もいます。

同じ空間で生活していても、犬は人間とは違う世界で生きています。

まず感覚受容器の構造が違うため、人と同じ環境にいても、目、耳、鼻から受け取る情報が人間とはまったく異なっているのです。

感覚受容器は、外部からの刺激を脳に伝えて行動を促す役割があります。

動物の行動には、それを促す何らかの刺激が必ず存在し、五感が敏感であるほど刺激を受けやすいということになります。

その行動を司(つかさど)るのが脳ですが、人の脳と、犬などの哺乳類の脳では大脳皮質(大脳の表面部分)のとくに前頭葉の働きが大きく違います。

前頭葉には、「思考・判断・情動のコントロール・行動の指令」という大事な役割がありますが、犬の前頭葉の働きは鈍く、簡単に言うと「犬は人のように本能を理性でコントロールすることが難しい」のです。

犬は哺乳動物のなかでも「頭がいい・かしこい動物」とされていますが、大脳皮質のうち前頭葉の占める割合は、人は30%、犬は7%、ネコは3%となっています。つまり、犬は人間のように何か考えに基づいて行動したり、意図的に行動をコントロールすることはほとんどできないのです。

人にいやがらせをすることはない

そうした脳の働きをふまえて、犬の行動や認知能力を見ていくと、次のような特徴があることがわかってきます。

●感情をコントロールすることが苦手
犬は、高ぶった気持ちを自分で落ち着かせたり、がまんするなど、情動・感情のコントロールが苦手です。

●善悪の判断はしないし、人社会のルールも理解できない
人間のモラルや道徳観とは無縁なので、自分の行為の善悪の判断をしません。基本、人の都合にはおかまいなしです。人社会のルールをそのまま押し付けようとしても、守るべき理由を理解できません。

●先のことを予測して考えることができない
これをやったらどうなるか、という先のことを考えることができません。たとえば、子ども用のぬいぐるみの腕を噛んで振り回したら、腕が取れてボロボロになる......といった行動の先の結果を予測することはしないし、できないのです。

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