火星開発は人類生存のためのプロジェクト
WHY MARS MATTERS
パーシビアランスが撮影した火星の画像 NASA-REUTERS
<火星への移住は、地球上の生物が生き延びるために必要な一歩>
NASAの無人探査車「パーシビアランス」が2月18日(米東部時間)、火星への着陸を果たした。これは太陽系にまつわるさまざまな疑問の解明に向けた大きな前進だ。パーシビアランスは今後、火星の地表で生命の痕跡を探し、火星の大気から酸素を生成する実験やヘリコプターの飛行実験を行う予定だ。
火星の土壌や石を採取して保管することも重要な任務だ。予定どおりならNASAは欧州宇宙機関(ESA)と協力して2028年に火星でこれらのサンプルを回収し、2032年に地球に持ち帰る。
そこから生命体のDNAが見つかることも考えられる。だが、それは火星での生命の痕跡を意味するとは限らない。
パーシビアランスはNASAジェット推進研究所(JPL)の宇宙船組立施設(SAF)内の無菌室で建造されたが、この環境でも微生物や人間のDNAが全くないわけではない。微生物が宇宙船に乗って宇宙へ行く「微生物ヒッチハイカー」の問題は1960年代から知られている。
最終的には人類が火星を訪れる
宇宙船の建造過程で、技術者や科学者の皮膚や唾液が付着することは避けられない。71年には旧ソ連の探査機が、76年にはアメリカのバイキング1号が火星に着陸しており、微生物や人間のDNAのかけらが火星に持ち込まれた可能性は高い。火星では巨大な砂嵐が何度も起きているから、それらのDNAが地表の至る所に付着していることはほぼ確実だろう。
今は遺伝学が著しく進歩しており、DNA塩基配列の解析も低コストで行える。地球上の生命体の遺伝子カタログ作成も、SAF無菌室の遺伝子マップ作成も、さらには惑星規模の遺伝子マップの作成も可能だ。16年のケイト・ルービンズ飛行士のミッションでは、宇宙でDNA分析し、地球上の新しい生命体のデータと照合できることが示された。
宇宙船上で、あるいは地球の厳しい環境下で生き延びることができるものは、火星でも生き延びられる可能性がある。そして最終的に人類は、火星に生命を(意図して)送り込むようになるだろう。
火星への有人飛行ミッションは、既に技術的には可能なのだ。私は4月に出版予定の新著の中で、数十人の宇宙飛行士を対象に行った研究結果を紹介している。その所見から、人類が火星を訪れるのは可能であり、さらにいくつかの革新と技術が実現すれば滞在することもできると考えている。