最新記事

市場

電気自動車(EV)で注目の日本企業は「ソニー」である理由

2021年2月2日(火)19時05分
安藤智彦(ジャーナリスト)

ソニーが家電IT見本市のCESでお披露目した「VISION-S」(2020年1月) Steve Marcus-REUTERS

<自動車は今後「動くコンピューター」となっていく。アナリストに聞いた、EV関連の注目銘柄。米テスラの株価は高止まりだが、日本ではトヨタではなく......>

(※1月5日発売の本誌「2021年に始める 投資超入門」特集より。編集部注:一部の情報は2020年12月末時点のものです)

ちょうど1年前、ソニーが家電IT見本市のCESでお披露目したある製品が来場者の度肝を抜いた。得意のゲーム機でもスマホでもない。極秘で進められた「新規参入」の正体は電気自動車(EV)だった。

「これからの『移動』を考える」と銘打ち、ベールを脱いだコンセプトカー「VISION-S」。車内外の人や物体を認識して高度な運転支援を実現する33個のセンサーを備え自動運転にも対応、試乗も可能だった。(編集部注:VISION-Sの試作車両は2020年12月に完成、ヨーロッパで公道走行テストが開始された=記事3ページ目に動画)
20210112issue_cover200.jpg
もっとも、ソニーが自ら自動車製造に乗り出すわけではない。EVは言わば「動くコンピューター」。バッテリーからモーターを駆動し、基本動作は人工知能(AI)を組み込んだソフトウエアで制御するという仕組みがベースとなる。

今後10年単位で脱ガソリン車へシフトしていく流れを見据え、EVを構成する要素技術を本格展開していくという強い意思を示すショーケースが「VISION-S」だった。

EVそのものの登場から数十年たつが、最初に本格的な製品を投入した米テスラの独壇場に近い状況が今なお続く。株価も高止まりだ。国ぐるみの支援を追い風に、中国企業のEV開発も急ピッチで進んでいる。

transaction_accounts_superbanner.jpg

そんななか、EVそのものを扱うプレーヤーとして、日本企業の存在感は希薄だ。だが、その要素技術ということなら、ソニー以外にも注目の銘柄がごろごろしている。

「日本電産のモーターやパナソニックの電池、アンリツの通信機器など、EVの基幹技術を支える製品は世界的に評価を受けている」と、ニッセイ基礎研究所の井出真吾チーフ株式ストラテジストは言う。

JPモルガン証券の阪上亮太チーフ株式ストラテジストも、個々の技術を支える企業群に注目するが、一方で「日本の自動車メーカーの評価は全く上がっていない」とする。

マネックス証券の広木隆チーフ・ストラテジストも同じ考えだ。「これまでの自動車メーカーの技術は、エンジンやハンドリングといった『走るための性能』を磨くものだった。EV時代になると、それだけでは稼げなくなる」(広木氏)

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

記録的豪雨のUAEドバイ、道路冠水で大渋滞 フライ

ワールド

インド下院総選挙の投票開始 モディ首相が3期目入り

ビジネス

ソニーとアポロ、米パラマウント共同買収へ協議=関係

ワールド

トルコ、経済は正しい軌道上にあり金融政策は十分機能
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:老人極貧社会 韓国
特集:老人極貧社会 韓国
2024年4月23日号(4/16発売)

地下鉄宅配に古紙回収......繁栄から取り残され、韓国のシニア層は貧困にあえいでいる

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なない理由が明らかに

  • 2

    「毛むくじゃら乳首ブラ」「縫った女性器パンツ」の衝撃...米女優の過激衣装に「冗談でもあり得ない」と怒りの声

  • 3

    止まらぬ金価格の史上最高値の裏側に「中国のドル離れ」外貨準備のうち、金が約4%を占める

  • 4

    価値は疑わしくコストは膨大...偉大なるリニア計画っ…

  • 5

    中ロ「無限の協力関係」のウラで、中国の密かな侵略…

  • 6

    「イスラエルに300発撃って戦果はほぼゼロ」をイラン…

  • 7

    中国のロシア専門家が「それでも最後はロシアが負け…

  • 8

    ハーバード大学で150年以上教えられる作文術「オレオ…

  • 9

    休日に全く食事を取らない(取れない)人が過去25年…

  • 10

    紅麴サプリ問題を「規制緩和」のせいにする大間違い.…

  • 1

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 2

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なない理由が明らかに

  • 3

    NASAが月面を横切るUFOのような写真を公開、その正体は

  • 4

    犬に覚せい剤を打って捨てた飼い主に怒りが広がる...…

  • 5

    攻撃と迎撃の区別もつかない?──イランの数百の無人…

  • 6

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 7

    アインシュタインはオッペンハイマーを「愚か者」と…

  • 8

    天才・大谷翔平の足を引っ張った、ダメダメ過ぎる「無…

  • 9

    帰宅した女性が目撃したのは、ヘビが「愛猫」の首を…

  • 10

    ハリー・ポッター原作者ローリング、「許すとは限ら…

  • 1

    人から褒められた時、どう返事してますか? ブッダが説いた「どんどん伸びる人の返し文句」

  • 2

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 3

    88歳の現役医師が健康のために「絶対にしない3つのこと」目からうろこの健康法

  • 4

    ロシアの迫撃砲RBU6000「スメルチ2」、爆発・炎上の…

  • 5

    バルチック艦隊、自国の船をミサイル「誤爆」で撃沈…

  • 6

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 7

    ロシアが前線に投入した地上戦闘ロボットをウクライ…

  • 8

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 9

    1500年前の中国の皇帝・武帝の「顔」、DNAから復元に…

  • 10

    浴室で虫を発見、よく見てみると...男性が思わず悲鳴…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中