最新記事

仮想通貨ウォーズ

仮想通貨はバブル崩壊後、これだけ変わった──価格、信用力、規制

THE CRYPTO WORLD, SINCE 2017

2019年12月5日(木)12時05分
藤田岳人(本誌記者)

──2年前と比べ、日本の規制環境はどのように変化したか。

取引所を作るのに、銀行並みの条件が求められるようになり、免許が非常に取りにくくなった。また日本の取引所は取り扱う通貨の種類が非常に少ないが、それも国内の規制が厳しいからだ。

ではその規制に意味があるかというと、ほとんどない。なぜなら、日本でも知識のある人は海外の取引所で取引をするからだ。世界の誰もがいつでも外国のマーケットにアクセスできる状況で、規制は消費者を保護するという目的は果たせない。日本の取引所の魅力がなくなって、儲からなくなるだけだ。

──現状は適切な規制環境ではないということか。

非常に否定的に見ている。取引所への要求が厳し過ぎるのに加え、取引所ではないところにも取引所並みの厳格さを求めており、事業が非常にやりにくい環境をつくっている。

今後、不動産を価値の裏付けとして所有権の分割のような形で(仮想通貨の一種である)トークンを発行するような手法が進んでいくとみられる。そのトークンを持っていれば、家賃の一部が得られる。しかし日本ではこうしたトークンは基本的に、証券会社でなければ扱えないと法律で決まった。せっかく技術革新が起きたのに、既得権益層しか扱えない。

──政治や行政に問題があるのか。

法律によって管理するという手法そのものが仮想通貨に向いておらず、時代遅れだと感じる。業種に限らず、変化のスピードが速い現代では、世の中を法律で管理することに無理が来ている面もある。こうした問題意識を持っている人は実は少なくない。

──2017年にはビットコイン以外の仮想通貨「アルトコイン」も注目を浴びたが、その潮流に変化はあるか。

当時人気だったアルトコインの多くは、価格が大きく下がり、新しいアルトコインに入れ替わった。

──現在、注目されているアルトコインにはどんなものがあるのか。

例えば面白いのはDAIという仮想通貨を使った「分散金融」。サイバー空間にある種の銀行があり、DAI所有者は誰でもそこでお金を貸して利息を得られる。別の通貨MKRを持つと、DAIを発行する組織の運営に参加できる。これは金融機関を分散的に運営するようなものだ。

そんな金融の仕組みは、人類の歴史に存在しなかった。ブロックチェーンの世界がすごいのは、新しい組織の形態など、これまでになかった概念そのものが生まれているところだ。MKRのように運営に参加する権利としての通貨はユーティリティ・トークンと呼ばれる。これはカネと言えばカネだが参加権でもあり、やはり従来の概念では言い表せずユーティリティ・トークンと呼ぶしかない。私の言っていることの意味が分からない人は、既存の言語では表現し切れないことが起こっているのだと思ってほしい。

magSR191204_crypto1.jpg

12月10日号「仮想通貨ウォーズ」特集26ページより

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

-日産、11日の取締役会で内田社長の退任案を協議=

ビジネス

デフレ判断指標プラス「明るい兆し」、金融政策日銀に

ビジネス

FRB、夏まで忍耐必要も 米経済に不透明感=アトラ

ワールド

トルコ、ウクライナで平和維持活動なら貢献可能=国防
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:進化し続ける天才ピアニスト 角野隼斗
特集:進化し続ける天才ピアニスト 角野隼斗
2025年3月11日号(3/ 4発売)

ジャンルと時空を超えて世界を熱狂させる新時代ピアニストの「軌跡」を追う

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「テスラ時代」の崩壊...欧州でシェア壊滅、アジアでも販売不振の納得理由
  • 2
    「コメが消えた」の大間違い...「買い占め」ではない、コメ不足の本当の原因とは?
  • 3
    113年間、科学者とネコ好きを悩ませた「茶トラ猫の謎」が最新研究で明らかに
  • 4
    著名投資家ウォーレン・バフェット、関税は「戦争行…
  • 5
    一世帯5000ドルの「DOGE還付金」は金持ち優遇? 年…
  • 6
    強まる警戒感、アメリカ経済「急失速」の正しい読み…
  • 7
    イーロン・マスクの急所を突け!最大ダメージを与え…
  • 8
    定住人口ベースでは分からない、東京23区のリアルな…
  • 9
    テスラ大炎上...戻らぬオーナー「悲劇の理由」
  • 10
    34年の下積みの末、アカデミー賞にも...「ハリウッド…
  • 1
    「テスラ時代」の崩壊...欧州でシェア壊滅、アジアでも販売不振の納得理由
  • 2
    テスラ離れが急加速...世界中のオーナーが「見限る」ワケ
  • 3
    イーロン・マスクへの反発から、DOGEで働く匿名の天才技術者たちの身元を暴露する「Doxxing」が始まった
  • 4
    アメリカで牛肉さらに値上がりか...原因はトランプ政…
  • 5
    ニンジンが糖尿病の「予防と治療」に効果ある可能性…
  • 6
    「浅い」主張ばかり...伊藤詩織の映画『Black Box Di…
  • 7
    イーロン・マスクの急所を突け!最大ダメージを与え…
  • 8
    「コメが消えた」の大間違い...「買い占め」ではない…
  • 9
    「絶対に太る!」7つの食事習慣、 なぜダイエットに…
  • 10
    ボブ・ディランは不潔で嫌な奴、シャラメの演技は笑…
  • 1
    テスラ離れが急加速...世界中のオーナーが「見限る」ワケ
  • 2
    【一発アウト】税務署が「怪しい!」と思う通帳とは?
  • 3
    「テスラ時代」の崩壊...欧州でシェア壊滅、アジアでも販売不振の納得理由
  • 4
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」…
  • 5
    「健康寿命」を延ばすのは「少食」と「皮下脂肪」だ…
  • 6
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される…
  • 7
    戦場に「北朝鮮兵はもういない」とロシア国営テレビ.…
  • 8
    人気も販売台数も凋落...クールなEVテスラ「オワコン…
  • 9
    細胞を若返らせるカギが発見される...日本の研究チー…
  • 10
    イーロン・マスクへの反発から、DOGEで働く匿名の天…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中