最新記事

仮想通貨ウォーズ

仮想通貨はバブル崩壊後、これだけ変わった──価格、信用力、規制

THE CRYPTO WORLD, SINCE 2017

2019年12月5日(木)12時05分
藤田岳人(本誌記者)

magSR191204_crypto2.jpg

12月10日号「仮想通貨ウォーズ」特集27ページより

──その中で、原点であるビットコインが廃れないのはなぜか。

ビットコインは特別。カリスマであり、スーパーブランドだ。例えば南アフリカの通貨ランドを知らない人でも、ビットコインは知っている。しかもマイニング業者など周辺を支えるコミュニティーがしっかりしていて、産業として確立している。

もう1つ、スマートコントラクトという契約実行のプラットフォームである「イーサリアム」を使う際、使用料のように働く仮想通貨イーサも、特別な地位を確立している。今後も、この2つが価値を失う事態は想像できない。

──ICO(仮想通貨を活用した資金調達手法)は廃れたのか。

規制の強化で日本では事実上できなくなった。ICOとは例えば遊園地を造りたい人が、先にチケットを売って集めたお金で遊園地を造るようなもの。お金の持ち逃げや、遊園地を造らない人が多く現れたことが、問題視された。

だが法規制には柔軟性がないので、まともな事業家まで、本来なら非常にポテンシャルの高い資金調達法だったはずのICOを使えなくなった。株式会社の場合はどうしても出資者である株主、つまり投資家を向いて経営しなければならないが、ICOの出資者はお客さんなのでお客さんのほうを向いて経営できる。

──では、どういった形での規制が望ましいのか。

法律でなくても管理はできる。例えば事業者が、ICOで集めた資金の引き出しは10回の分割で、しかも毎回出資者の過半数の合意がなければできないと決めればよい。持ち逃げできないことに事業者が自分でコミットするのだ。先ほど言ったスマートコントラクトという仕組みを使えば、こうした仕組みはつくれる。しかも自らが設定した条件を、誰も変えられない。出資したい人は、こうした仕組みがあるかどうかでICOを評価すればよい。ないならないで、それなりに評価すればよい。

これなら法律で厳しく規制しなくても市場で選別できる。スマートコントラクトは必ず発動する、信用を必要としない「トラストレス」の仕組みであり、持ち逃げを抑止できる。

──ほかに注目すべきテクノロジーの進化はあるか。

テクノロジーの進化というよりも、テクノロジーの利用方法の進化に注目すべきだ。新しいものだと分散金融のような。ビットコインも本当にすごいのは技術そのものというよりも、既存の技術を組み合わせて新しい概念のお金を創出したところだ。概念の創出がすごいのだ。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

トランプ氏、次期FRB議長にウォーシュ氏かハセット

ビジネス

アングル:トランプ関税が生んだ新潮流、中国企業がベ

ワールド

アングル:米国などからトップ研究者誘致へ、カナダが

ビジネス

NY外為市場=ドル上昇、方向感欠く取引 来週の日銀
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:ジョン・レノン暗殺の真実
特集:ジョン・レノン暗殺の真実
2025年12月16日号(12/ 9発売)

45年前、「20世紀のアイコン」に銃弾を浴びせた男が日本人ジャーナリストに刑務所で語った動機とは

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    デンマーク国防情報局、初めて米国を「安全保障上の脅威」と明記
  • 2
    【衛星画像】南西諸島の日米新軍事拠点 中国の進出を睨み建設急ピッチ
  • 3
    受け入れ難い和平案、迫られる軍備拡張──ウクライナの選択肢は「一つ」
  • 4
    【クイズ】「100名の最も偉大な英国人」に唯一選ばれ…
  • 5
    「前を閉めてくれ...」F1観戦モデルの「超密着コーデ…
  • 6
    【揺らぐ中国、攻めの高市】柯隆氏「台湾騒動は高市…
  • 7
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 8
    首や手足、胴を切断...ツタンカーメンのミイラ調査開…
  • 9
    現役・東大院生! 中国出身の芸人「いぜん」は、なぜ…
  • 10
    世界最大の都市ランキング...1位だった「東京」が3位…
  • 1
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした「信じられない」光景、海外で大きな話題に
  • 2
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価に与える影響と、サンリオ自社株買いの狙い
  • 3
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だから日本では解決が遠い
  • 4
    兵士の「戦死」で大儲けする女たち...ロシア社会を揺…
  • 5
    【衛星画像】南西諸島の日米新軍事拠点 中国の進出…
  • 6
    健康長寿の鍵は「慢性炎症」にある...「免疫の掃除」…
  • 7
    デンマーク国防情報局、初めて米国を「安全保障上の…
  • 8
    キャサリン妃を睨む「嫉妬の目」の主はメーガン妃...…
  • 9
    ホテルの部屋に残っていた「嫌すぎる行為」の証拠...…
  • 10
    中国軍機の「レーダー照射」は敵対的と、元イタリア…
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後」の橋が崩落する瞬間を捉えた「衝撃映像」に広がる疑念
  • 3
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸送機「C-130」謎の墜落を捉えた「衝撃映像」が拡散
  • 4
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした…
  • 5
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 6
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 7
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 8
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 9
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 10
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中