最新記事

はやぶさ2

興奮! しつこく、粘り強く「はやぶさ2」とチームは一体となった

2019年2月26日(火)20時00分
秋山文野

「岩の数、高さまでしつこいくらい観測した」

今回素晴らしく賢く、津田雄一プロジェクトマネージャが「10月からこの4か月間計画を万全にして、昨日、今日と着陸に臨みました。想定の中ではベストで着陸できたと思います」と評したタッチダウンを成功させたはやぶさ2。事前の計画と準備を行ったチームの力がある。

当日のフライトディレクターを務めた佐伯孝尚プロジェクトエンジニアは「チーム全体の、ある意味しつこさが実ったのかと思います。訓練をしつこいくらいやって、到着したらしたでリュウグウ全体を観測した上で、L08の岩の数、高さまでしつこいくらい観測して、それが今回の成功に結び付いたかなと思います」と緻密な事前準備について述べた。

hayabusa2_TD_candidate_site_DEM_mono.png

佐伯プロジェクトエンジニアが「しつこいくらい」行った準備のひとつがタッチダウン候補地点付近の3D地形図作成だった。クレジット:JAXA

最速タッチダウンを成功させたチームの力は、その精度にも現れたようだ。当初は2018年10月に予定されていたタッチダウンを2019年の2月まで延期したのは、小惑星リュウグウが事前の予想以上に岩が多い地形で、50~60センチメートル以上の岩がない、直径100メートルの開けた場所は見つからなかったことによる。そのため、当初予定の16分の1という直径6メートルのごく狭い領域を目指すことになった。

タッチダウンから1分後にはやぶさ2が撮影したリュウグウの画像には、上昇するはやぶさ2の小型エンジンの噴射または発射したプロジェクタイル(弾丸)によって巻き上げられた砂が濃いグレーに写っている。

この画像からリュウグウ表面の岩石の性質の手がかりを得ることができ、研究者を興奮に巻き込んでいる。それだけでなく、タッチダウン予定だったエリアをマーキングしてみると、砂の部分はほぼタッチダウン領域と一致。はやぶさ2はわずか6メートルの領域に予定通り降りたといえそうだ。

Pub_40900_20190222000441_58216A36_NAV.jpg

タッチダウンの約1分後にはやぶさ2が上昇しながらタッチダウン地点付近を撮影した画像。 広角光学航法カメラ(ONC-W1)で機上時刻(はやぶさ2とリュウグウの現地時刻)2019年2月22日07:30ごろに撮影された。クレジット:JAXA, 東京大, 高知大, 立教大, 名古屋大, 千葉工大, 明治大, 会津大, 産総研)


Fig2.jpg

上昇するはやぶさ2が撮影した画像にタッチダウン予定地点を重ねた図。矢印の先の白い点は、目印としたターゲットマーカ。クレジット:JAXA, 東京大, 高知大, 立教大, 名古屋大, 千葉工大, 明治大, 会津大, 産総研)

人工的にクレーターを作る重要なミッションに

今後はやぶさ2は、3月から4月にかけて、インパクターと呼ばれる銅製の衝突体をリュウグウ表面にぶつけ、人工的にクレーターを作る重要なミッションに挑む。クレーターの直径は2~3メートルになると考えられており、このクレーター付近に降りて物質を採取するとすれば、第1回タッチダウン同様に精密な着陸を要求される。

第1回タッチダウンにあたり、はやぶさ2が事前に観測した情報を元に、着陸予定地付近の3D地形モデルを作成して準備に望んだ。佐伯プロジェクトエンジニアのいう「L08の岩の数、高さまで」調べたということだ。インパクター衝突後には地形が一変するため、改めて3D地形モデルの作成も検討しているという。しつこく、粘り強くはやぶさ2とチームは一体となって、次の重要ミッションに挑もうとしている。

今、あなたにオススメ

関連ワード

ニュース速報

ワールド

トランプ氏、米軍制服組トップ解任 指導部の大規模刷

ワールド

アングル:性的少数者がおびえるドイツ議会選、極右台

ワールド

アングル:高評価なのに「仕事できない」と解雇、米D

ビジネス

米国株式市場=3指数大幅下落、さえない経済指標で売
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:ウクライナが停戦する日
特集:ウクライナが停戦する日
2025年2月25日号(2/18発売)

ゼレンスキーとプーチンがトランプの圧力で妥協? 20万人以上が死んだ戦争が終わる条件は

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」だった?...高濃度で含まれる「食べ物」に注意【最新研究】
  • 2
    人気も販売台数も凋落...クールなEVテスラ「オワコン化」の理由
  • 3
    メーガン妃が「アイデンティティ危機」に直面...「必死すぎる」「迷走中」
  • 4
    1888年の未解決事件、ついに終焉か? 「切り裂きジャ…
  • 5
    深夜の防犯カメラ写真に「幽霊の姿が!」と話題に...…
  • 6
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される…
  • 7
    ソ連時代の「勝利の旗」掲げるロシア軍車両を次々爆…
  • 8
    私に「家」をくれたのは、この茶トラ猫でした
  • 9
    トランプが「マスクに主役を奪われて怒っている」...…
  • 10
    飛行中の航空機が空中で発火、大炎上...米テキサスの…
  • 1
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」だった?...高濃度で含まれる「食べ物」に注意【最新研究】
  • 2
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される【最新研究】
  • 3
    人気も販売台数も凋落...クールなEVテスラ「オワコン化」の理由
  • 4
    戦場に「北朝鮮兵はもういない」とロシア国営テレビ.…
  • 5
    動かないのに筋力アップ? 88歳医大名誉教授が語る「…
  • 6
    朝1杯の「バターコーヒー」が老化を遅らせる...細胞…
  • 7
    7年後に迫る「小惑星の衝突を防げ」、中国が「地球防…
  • 8
    ビタミンB1で疲労回復!疲れに効く3つの野菜&腸活に…
  • 9
    「トランプ相互関税」の範囲が広すぎて滅茶苦茶...VA…
  • 10
    飛行中の航空機が空中で発火、大炎上...米テキサスの…
  • 1
    週刊文春は「訂正」を出す必要などなかった
  • 2
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる唯一の方法
  • 3
    【一発アウト】税務署が「怪しい!」と思う通帳とは?
  • 4
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」…
  • 5
    「健康寿命」を延ばすのは「少食」と「皮下脂肪」だ…
  • 6
    1日大さじ1杯でOK!「細胞の老化」や「体重の増加」…
  • 7
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される…
  • 8
    戦場に「北朝鮮兵はもういない」とロシア国営テレビ.…
  • 9
    世界初の研究:コーヒーは「飲む時間帯」で健康効果…
  • 10
    「DeepSeekショック」の株価大暴落が回避された理由
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中