ICO詐欺から逃れるには? 日本人が知らない仮想通貨の闇
ねずみ講が疑われる場合
投資詐欺の典型的な手口はねずみ講、またはポンジスキーム(自転車操業)と呼ばれるタイプ。早めに投資した人ほど高い配当を得られますと勧誘し、事業が始まる前から配当を払ったりする。こうしたうま過ぎる話は、たいてい詐欺だ。事業収益からの配当ではなく、後から参加した人の資金を支払いに回しているだけだ。
この手法は、投資家が増え続けている間は機能するかもしれないが、キャッシュフローが止まれば破綻するのは時間の問題。後から参加した人は投じた資金のほとんどを失うだろう。「自分だけはだまされない」という過信は禁物。この手の詐欺に百戦錬磨の投資家がだまされた例はいくらでもある。
高リターンを約束された場合
ビットコインなどの仮想通貨は、この1年で信じられないほどのリターンをもたらした。そのせいで「よし、自分も」と思う人が増えた。こうした状況では誰もが大きなリターンに目がくらみ、慎重さを失いがちだ。
詐欺師はそこに付け込んで、ICOの応募者に大きな利益を約束する。きちんとしたICOなら、(通常の投資商品の場合と同様)具体的なリターンの「保証」などしない。投資にはリスクが伴うことをはっきりと説明し、期待できる利益の程度について現実的な見通しを提供するだけだ。
だから一定のリターンを約束したり、莫大なリターンを期待できるとほのめかすようなICOには要注意。それから、まっとうなICOなら自分たちの主張を裏付けるデータを用意しているはずだ。どんなICOのホワイトペーパーにも、必ず事業に関わるリスクを説明した章がある。それがないのは、まずインチキとみていい。
ネット「荒らし」の場合
仮にそのICOがまっとうなものであっても、暗号コミュニティーで初心者をだまそうとするネット上の「荒らし」に注意する必要がある。
荒らし屋は、偽サイトに誘導して個人情報をだまし取るフィッシングだけでなく、さまざまなハッキングの手口を繰り出してくる。
そうした荒らし屋たちは組織的に行動し、ICOに応じた資金をそっくり巻き上げたり、資金を「人質」にして経営陣を脅迫したりする。
暗号プロジェクトは本質的に、こうした攻撃の影響を受けやすい。なぜなら攻撃者を追跡するのが困難で、盗まれたり巻き上げられたりした資金がさまざまな取引所や暗号通貨を経由して姿をくらますことも多いからだ。
逆に、まともなミッションと事業計画を持つベンチャー企業が、悪意の荒らし屋に「詐欺」と名指しされ、破滅に追いやられることもある。成功している事業ほど詐欺の汚名を着せられるリスクが高い。
<ニューズウィーク日本版2月6日発売号(2018年2月13日号)は「日本人が知らない 仮想通貨の闇」特集。コインチェックでのNEM巨額流出騒ぎは氷山の一角。ICO詐欺から、テザー疑惑、量子コンピューターまで、「理想の通貨」になお潜む難題とリスクに迫った。この記事は特集より抜粋>