最新記事

ビットコイン 可能性と危険性

ビットコイン取引が多い日本、影響力がないのはなぜか(4者インタビュー)

2017年11月14日(火)13時09分
ニューズウィーク日本版編集部

仮想通貨取引所ビットバンク株式会社代表取締役CEOの廣末紀之 Hisako Kawasaki-Newsweek Japan


20171121cover_150.jpg<ニューズウィーク日本版11月14日発売号(2017年11月21日号)は「ビットコイン 可能性と危険性」特集。ただの投機手段でなく、1000種類以上に増殖した仮想通貨を基礎から解説。実は日本は、仮想通貨の取引量で世界でも大きな割合を占める。取引所、監督官庁、金融機関、マイニング業者それぞれの立場から現状と未来を語ってもらったインタビューを、特集から転載>

将来は価値取引の基盤に

廣末紀之(仮想通貨取引所ビットバンク株式会社 代表取締役CEO)

――日本で仮想通貨が注目され、取引量が増えているのはなぜか。

最近で言うと、改正資金決済法によって登録制になった取引所が真っ当な事業として認可され、仮想通貨も支払いの媒体として正式に認められた。仮想通貨を使った新ビジネスも生まれ、世間の関心が高まっている。

ただ日本の取引量が(世界の4割とも言われるほど)突出しているというのは誤解だ。日本の一部の取引所は(レバレッジをかけて行う)差金決済取引を現物と合算している。実態は低くはないが、そこまでではない。

――影響力の面では日本の地位は低いとされるが、なぜか。

マイニング(採掘)や開発など影響力を持つ領域に日本はほぼ参加していない。取引量が多くても「お客さん」でしかない。

――国家がルール作りに関与するのはいいことなのか。

国家の関与には疑問もある。ビットコインなどは、一部の権力者が物事を決める体制への反抗から、非中央集権的な思想を持っている。ただそれはガバナンス不足ということでもあり、意見が割れると烏合の衆になる。

一方で、(開発・運営ではなく)利用のレベルでは規制があっていいと思う。不正を防ぎ、利用者を保護するための今回の日本の規制にはおおむね満足している。イノベーションを阻害せず、最低限にとどめる姿勢も英断だったと思う。

――仮想通貨は今後、どこまでの存在になっていくと思うか。

インターネットが情報をやりとりする基盤であるように、価値やマネーをやりとりする基盤になり得る。将来、人間を介さず人工知能など同士が勝手に考えて決済を含む取引をし始める。1円未満の少額決済を含め、そこでは手数料が安く処理速度が速い仮想通貨が使われるだろう。ただ社会に不可欠な存在にはなるが、現金などに取って代わるということではない。役割が違い、共存できる。だから私は普段、どこかの店での支払いに仮想通貨を使ったりはしない。

審査と規制のカギは技術革新の促進と利用者保護との両立

水口純(金融庁監督局審議官)

――4月に施行された改正資金決済法に基づき、仮想通貨交換業者の登録制が始まった。

交換業者の審査は主に次の視点から実施した。利用者保護のためサイバー攻撃やなりすましによる不正送金等を防ぐシステムの安全性。マネーロンダリング(資金洗浄)やテロ資金への対策。顧客から預かった資産と業者の資産の分別管理。法定通貨のような裏付けがなく、価格変動が大きいといった仮想通貨のリスクの顧客への説明体制だ。

――ただ規制で締め付けるだけではないということか?

仮想通貨のような新しいサービスが登場したとき、利用者にとって利便性があるのであれば、むやみにイノベーションを阻害すべきではない。半面、野放しでもいけないので、その意味で改正法は、利用者保護とイノベーション促進のバランスが取れたものになっていると思う。

――交換業者の登録制のほかにも、規制が行われる可能性は?

仮想通貨を利用した新ビジネスは今後も出てくるだろうが、新たな規制が必要かは個別具体的に実態をよく把握し、利用者保護とイノベーション促進のバランスを見ながら判断する必要がある。そうした動きをフォワードルッキングに(将来を見越した視野で)把握していきたい。

――例えばICO(仮想通貨を活用した資金調達)は、中国などでは全面禁止された。

海外では(資金調達の際に公表する)事業計画書どおりに進んでいない例や、資金調達だけ行い姿を消すような例もあると聞いている。中国や韓国はそうした資金調達が詐欺的と考え、さらにマネーロンダリング等の懸念もあって禁止したのだろう。

現時点で日本ではICOの件数は多くないと認識しているが、今後増えていく可能性や、そこに詐欺的なものが含まれる可能性も否定できない。イノベーションの1つであると同時に負の側面もあり得るということを踏まえ、実態をよく注視していく必要がある。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

米印外相会談、「非正規移民」巡る懸念協議

ワールド

再送日米外相、ロ朝の連携や中国の対ロ防衛産業支援巡

ワールド

日米豪印が外相会合、トランプ政権発足直後に中国けん

ビジネス

EU一律の新興企業ルール導入を、米への流出阻止=欧
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:トランプの頭の中
特集:トランプの頭の中
2025年1月28日号(1/21発売)

いよいよ始まる第2次トランプ政権。再任大統領の行動原理と世界観を知る

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    有害なティーバッグをどう見分けるか?...研究者のアドバイス【最新研究・続報】
  • 2
    被害の全容が見通せない、LAの山火事...見渡す限りの焼け野原
  • 3
    「バイデン...寝てる?」トランプ就任式で「スリーピー・ジョー」が居眠りか...動画で検証
  • 4
    失礼すぎる!「1人ディズニー」を楽しむ男性に、女性…
  • 5
    ティーバッグから有害物質が放出されている...研究者…
  • 6
    大統領令とは何か? 覆されることはあるのか、何で…
  • 7
    世界第3位の経済大国...「前年比0.2%減」マイナス経…
  • 8
    トランプ新政権はどうなる? 元側近スティーブ・バノ…
  • 9
    電子レンジは「バクテリアの温床」...どう掃除すれば…
  • 10
    「敵対国」で高まるトランプ人気...まさかの国で「世…
  • 1
    有害なティーバッグをどう見分けるか?...研究者のアドバイス【最新研究・続報】
  • 2
    失礼すぎる!「1人ディズニー」を楽しむ男性に、女性客が「気味が悪い」...男性の反撃に「完璧な対処」の声
  • 3
    「拷問に近いことも...」獲得賞金は10億円、最も稼いでいるプロゲーマーが語る「eスポーツのリアル」
  • 4
    【クイズ】世界で1番マイクロプラスチックを「食べて…
  • 5
    ティーバッグから有害物質が放出されている...研究者…
  • 6
    轟音に次ぐ轟音...ロシア国内の化学工場を夜間に襲う…
  • 7
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参…
  • 8
    【クイズ】次のうち、和製英語「ではない」のはどれ…
  • 9
    被害の全容が見通せない、LAの山火事...見渡す限りの…
  • 10
    ドラマ「海に眠るダイヤモンド」で再注目...軍艦島の…
  • 1
    ティーバッグから有害物質が放出されている...研究者が警告【最新研究】
  • 2
    大腸がんの原因になる食品とは?...がん治療に革命をもたらす可能性も【最新研究】
  • 3
    体の筋肉量が落ちにくくなる3つの条件は?...和田秀樹医師に聞く「老けない」最強の食事法
  • 4
    夜空を切り裂いた「爆発の閃光」...「ロシア北方艦隊…
  • 5
    有害なティーバッグをどう見分けるか?...研究者のア…
  • 6
    TBS日曜劇場が描かなかった坑夫生活...東京ドーム1.3…
  • 7
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 8
    「涙止まらん...」トリミングの結果、何の動物か分か…
  • 9
    「戦死証明書」を渡され...ロシアで戦死した北朝鮮兵…
  • 10
    「腹の底から笑った!」ママの「アダルト」なクリス…
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中