ビットコイン取引が多い日本、影響力がないのはなぜか(4者インタビュー)
使いこなすためにはリスクの認識と技術の理解も必要
■藤井達人(株式会社三菱UFJフィナンシャル・グループ デジタル企画部プリンシパルアナリスト)
――10月に発表されたMUFGコインは仮想通貨なのか。
ビットコインなど一般的な仮想通貨とは違って発行体があり、ブロックチェーンは非公開で、価値も固定されている。私たちとしては安心・安全に使えるこうした「新しいデジタル通貨」にニーズがあると考えている。
ただ将来は、一般の仮想通貨に近い使われ方も想定している。店頭での決済だけでなく、サプライチェーンの効率化やIoT(モノのインターネット)の発達で生まれる「機器同士の決済」にも使えるだろう。
――国外では仮想通貨に対する考え方が金融機関の間で分かれているが、どう思うか。
投資銀行などは金融商品として見ており、時価総額が膨らむ一方であることや値動きの大きさからして、顧客の要望で売買を増やす可能性があるのは当然だ。一方、商業銀行は顧客層が違い、今は積極的に勧める必要がない。立場や事業内容が違うので判断も当然変わってくる。
――仮想通貨の未来像は?
個人的には、いずれはグローバル企業の決済にも取り込まれる可能性があると考えている。国ごとに口座を持つより、仮想通貨の口座を1つ持てばいいと企業が考えてもおかしくない。
一方、中央銀行が仮想通貨を発行する可能性もある。例えば仮に中国政府が自国企業との取引には「デジタル人民元」を使うよう決めれば、世界中の企業がデジタル人民元を保有するようになる。それがほかの決済でも使われ始めると、次世代の基軸通貨になるかもしれない。
――通貨や投資対象として、どんなリスクがあるか。
技術をある程度理解しないと使いこなせない。例えば通貨をスマートフォンに入れて管理している場合、スマホをなくすと資金が永遠に失われる危険がある。管理者がいないので問い合わせ先もない。取引所に置いている場合も、経営破綻など別の危険がある。リスクをきちんと認識することが必要だ。
日本企業の健全なイメージは強み
■川本栄介(株式会社DMM.comクリプトマイニング事業部長)
――マイニングは中国勢が強いとされるが、日本勢の強みは?
マイニングは単純に電気代が安い所が有利。ただ、中国には規制強化の向かい風が吹いている。これは日本にとっては追い風で、今はそれに乗って行けるタイミングだ。
――既にマイニング事業は開始しているのか。
9月に事業参入を発表し、今は準備段階。遅くとも年明けにはプール(マイニングを行うマシンのグループ)を公開する。その上でクラウドマイニング(本誌24ページ参照)など外部の協力を募る予定だ。自己資本だけでは限界がある。ここで日本の強みの話に戻るが、日本企業なので健全なイメージを打ち出せる。規制強化もあり、中国への協力や投資をためらう人はいる。既に世界中から問い合わせが来た。
――仮想通貨で影響力がないと言われる日本の問題点は?
ブロックチェーンの技術者の少なさに加え、情報発信も弱い。海外からは意外と日本は面白いと思われているが、アピールできていない。DMMが思想やビジョンをしっかり示せば、大勢の協力者を呼び込めるはず。そうすれば発言力も上がる。
まずは分かりやすく儲かるマイニングで足元を固め、そこからスマートコントラクト(本誌24ページ参照)やICOの監査など新たな事業に利益を回していきたい。
――日本で仮想通貨は投資対象として見られることが多いが。
それはそれでいいと思う。一般の人が興味を持って入ってきて、まずは仮想通貨というものに関わってみる。そこから、手にした仮想通貨を何かに利用するという段階に発展させる。みんなで成功も失敗もしながら経験値を積んでいけばいい。そこから新しいものが見えてくる。
今の状況は、ゲームチェンジが起きる時かもしれない。そこにベンチャーとして「張って」おきたい。何がどうなるかは分からないが、やってみないと分からない。DMMは、失敗してもどんどんチャレンジすることを重視する企業風土なので。
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