最新記事

ビットコイン 可能性と危険性

ビットコイン取引が多い日本、影響力がないのはなぜか(4者インタビュー)

2017年11月14日(火)13時09分
ニューズウィーク日本版編集部

使いこなすためにはリスクの認識と技術の理解も必要

藤井達人(株式会社三菱UFJフィナンシャル・グループ デジタル企画部プリンシパルアナリスト)

――10月に発表されたMUFGコインは仮想通貨なのか。

ビットコインなど一般的な仮想通貨とは違って発行体があり、ブロックチェーンは非公開で、価値も固定されている。私たちとしては安心・安全に使えるこうした「新しいデジタル通貨」にニーズがあると考えている。

ただ将来は、一般の仮想通貨に近い使われ方も想定している。店頭での決済だけでなく、サプライチェーンの効率化やIoT(モノのインターネット)の発達で生まれる「機器同士の決済」にも使えるだろう。

――国外では仮想通貨に対する考え方が金融機関の間で分かれているが、どう思うか。

投資銀行などは金融商品として見ており、時価総額が膨らむ一方であることや値動きの大きさからして、顧客の要望で売買を増やす可能性があるのは当然だ。一方、商業銀行は顧客層が違い、今は積極的に勧める必要がない。立場や事業内容が違うので判断も当然変わってくる。

――仮想通貨の未来像は?

個人的には、いずれはグローバル企業の決済にも取り込まれる可能性があると考えている。国ごとに口座を持つより、仮想通貨の口座を1つ持てばいいと企業が考えてもおかしくない。

一方、中央銀行が仮想通貨を発行する可能性もある。例えば仮に中国政府が自国企業との取引には「デジタル人民元」を使うよう決めれば、世界中の企業がデジタル人民元を保有するようになる。それがほかの決済でも使われ始めると、次世代の基軸通貨になるかもしれない。

――通貨や投資対象として、どんなリスクがあるか。

技術をある程度理解しないと使いこなせない。例えば通貨をスマートフォンに入れて管理している場合、スマホをなくすと資金が永遠に失われる危険がある。管理者がいないので問い合わせ先もない。取引所に置いている場合も、経営破綻など別の危険がある。リスクをきちんと認識することが必要だ。

日本企業の健全なイメージは強み

川本栄介(株式会社DMM.comクリプトマイニング事業部長)

――マイニングは中国勢が強いとされるが、日本勢の強みは?

マイニングは単純に電気代が安い所が有利。ただ、中国には規制強化の向かい風が吹いている。これは日本にとっては追い風で、今はそれに乗って行けるタイミングだ。

――既にマイニング事業は開始しているのか。

9月に事業参入を発表し、今は準備段階。遅くとも年明けにはプール(マイニングを行うマシンのグループ)を公開する。その上でクラウドマイニング(本誌24ページ参照)など外部の協力を募る予定だ。自己資本だけでは限界がある。ここで日本の強みの話に戻るが、日本企業なので健全なイメージを打ち出せる。規制強化もあり、中国への協力や投資をためらう人はいる。既に世界中から問い合わせが来た。

――仮想通貨で影響力がないと言われる日本の問題点は?

ブロックチェーンの技術者の少なさに加え、情報発信も弱い。海外からは意外と日本は面白いと思われているが、アピールできていない。DMMが思想やビジョンをしっかり示せば、大勢の協力者を呼び込めるはず。そうすれば発言力も上がる。

まずは分かりやすく儲かるマイニングで足元を固め、そこからスマートコントラクト(本誌24ページ参照)やICOの監査など新たな事業に利益を回していきたい。

――日本で仮想通貨は投資対象として見られることが多いが。

それはそれでいいと思う。一般の人が興味を持って入ってきて、まずは仮想通貨というものに関わってみる。そこから、手にした仮想通貨を何かに利用するという段階に発展させる。みんなで成功も失敗もしながら経験値を積んでいけばいい。そこから新しいものが見えてくる。

今の状況は、ゲームチェンジが起きる時かもしれない。そこにベンチャーとして「張って」おきたい。何がどうなるかは分からないが、やってみないと分からない。DMMは、失敗してもどんどんチャレンジすることを重視する企業風土なので。

magSR171114-2b.jpg

株式会社DMM.comクリプトマイニング事業部長の川本栄介 Hisako Kawasaki-Newsweek Japan

※「ビットコイン 可能性と危険性」特集号はこちらからお買い求めいただけます。

【お知らせ】ニューズウィーク日本版メルマガリニューアル!
 ご登録(無料)はこちらから=>>

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

ミャンマー地震の死者1000人超に、タイの崩壊ビル

ビジネス

中国・EUの通商トップが会談、公平な競争条件を協議

ワールド

焦点:大混乱に陥る米国の漁業、トランプ政権が割当量

ワールド

トランプ氏、相互関税巡り交渉用意 医薬品への関税も
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:まだ世界が知らない 小さなSDGs
特集:まだ世界が知らない 小さなSDGs
2025年4月 1日号(3/25発売)

トランプの「逆風」をはね返す企業の努力が地球を救う

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?
  • 2
    現地人は下層労働者、給料も7分の1以下...友好国ニジェールからも追放される中国人
  • 3
    一体なぜ、子供の遺骨に「肉を削がれた痕」が?...中国・河南省で見つかった「異常な」埋葬文化
  • 4
    なぜ「猛毒の魚」を大量に...アメリカ先住民がトゲの…
  • 5
    突然の痛風、原因は「贅沢」とは無縁の生活だった...…
  • 6
    なぜANAは、手荷物カウンターの待ち時間を最大50分か…
  • 7
    不屈のウクライナ、失ったクルスクの代わりにベルゴ…
  • 8
    アルコール依存症を克服して「人生がカラフルなこと…
  • 9
    最古の記録が大幅更新? アルファベットの起源に驚…
  • 10
    最悪失明...目の健康を脅かす「2型糖尿病」が若い世…
  • 1
    「一夜にして死の川に」 ザンビアで、中国所有の鉱山ダムから有毒の水が流出...惨状伝える映像
  • 2
    テスラの没落が止まらない...株価は暴落、業績も行き詰った「時代遅れ企業」の行く末は?【アニメで解説】
  • 3
    「低炭水化物ダイエット」で豆類はNG...体重が増えない「よい炭水化物」とは?
  • 4
    「テスラ離れ」止まらず...「放火」続発のなか、手放…
  • 5
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い…
  • 6
    【独占】テスラ株急落で大口投資家が本誌に激白「取…
  • 7
    800年前のペルーのミイラに刻まれた精緻すぎるタトゥ…
  • 8
    中国戦闘機が「ほぼ垂直に墜落」する衝撃の瞬間...大…
  • 9
    大谷登場でざわつく報道陣...山本由伸の会見で大谷翔…
  • 10
    「さようなら、テスラ...」オーナーが次々に「売り飛…
  • 1
    中国戦闘機が「ほぼ垂直に墜落」する衝撃の瞬間...大爆発する機体の「背後」に映っていたのは?
  • 2
    テスラ離れが急加速...世界中のオーナーが「見限る」ワケ
  • 3
    「テスラ時代」の崩壊...欧州でシェア壊滅、アジアでも販売不振の納得理由
  • 4
    「さようなら、テスラ...」オーナーが次々に「売り飛…
  • 5
    「一夜にして死の川に」 ザンビアで、中国所有の鉱山…
  • 6
    テスラ失墜...再販価値暴落、下取り拒否...もはやス…
  • 7
    「今まで食べた中で1番おいしいステーキ...」ドジャ…
  • 8
    市販薬が一部の「がんの転移」を防ぐ可能性【最新研…
  • 9
    テスラ販売急減の衝撃...国別に見た「最も苦戦してい…
  • 10
    テスラの没落が止まらない...株価は暴落、業績も行き…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中