営業車両100%EV化へ、人と地球の「健康」を守る――アストラゼネカの脱炭素戦略
2つ目は、営業車両の電気自動車(EV)化の取り組みだ。
日本自動車販売協会連合会によると、2023年の登録台数(乗用車)に占めるEVの割合は約1.7%で、充電のインフラも整っているとは言いがたいが、同社は従業員が充電に使用した電気代に対する補助手当や、降雪地帯における実証実験などによって導入を推進。2024年10月の時点で、営業車両の約70%をEV化することに成功している。
この取り組みには、他の企業からも注目が集まっており、営業車両をEV化する際の参考事例に挙げられることも増えているそうだ。
科学的根拠のある排出削減ロードマップ、『企業ネットゼロ基準』の認定を先駆け取得
移動時のCO2排出量削減は、アストラゼネカのグローバルな取り組みの一部に過ぎないが、その一番の特徴は、SBTiの企業ネットゼロ基準に沿って、科学的根拠に基づいて独自のロードマップを作成している点にある。
現在、「平均気温の上昇を産業革命前と比べ1.5~2℃に抑える」というのが世界共通の目標だが、アストラゼネカでは原料調達から製造、販売、消費、廃棄までの各種データを集積した上で、目標達成の道筋を解析。
「2026年までに自社事業における温室効果ガスの排出量を2015年比で98%削減する」「2045年までにバリューチェーン全体の温室効果ガス排出量の絶対量を2019年比で90%削減し、ネットゼロを達成する」などの具体的な目標を打ち出している。
この脱炭素目標は「アンビション・ゼロカーボン」と名付けられ、世界規模で多くの活動が行われている。それらの取り組みの中には排出する温室効果ガスを削減するだけでなく、自然由来の方法で「除去」する活動も含まれている。
「AZフォレスト」と呼ばれる植樹活動がそれだ。「AZフォレスト」は、2030年までに6つの大陸で2億本の植樹を行うプログラムで、約30年かけて3000万トンの二酸化炭素を除去することを目指している。
以上のようなアプローチに取り組む背景として、1.5℃目標を達成するための国際的な基準を定義する国際機関SBTi(Science Based Targets initiative)が、2021年に企業のネットゼロ基準を導入した際、アストラゼネカは最初に認証された7社のうちの1社となり、評価されている。
脱炭素社会の実現を目指す道のりは平坦ではない。明るい未来にたどり着くには、それぞれの企業が努力するだけでなく、国や地域、企業、個人が相互に協力し合うことが重要になるだろう。
先進的な取り組みを行う企業が道を開き、賛同する多くの地域、企業、個人が追随していく――。そうした動きが積み重なって、社会全体のムーブメントになれば、ネットゼロという目標はより早く実現に近づくに違いない。
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