欧州で人気上昇、レンタル式の学校や病院用施設 モジュール型で増設や撤去が可能
町にある基礎学校(小学校と中学校を合わせた9年間)の1つ、コスキ・スクールセンターには4つの建物があり、2019年から2021年の間に建てられた2階建ての建物2棟がレンタル建築だ。およそ360人が2つの校舎を使っている(1棟にはインターナショナルスクールも入居)。レンタル期間は2019年から2031年までで、月額料金は約400万円(2万3270ユーロを現在のレートで換算)だという。
期間限定の建築だが品質は恒久的な建物と変わらず、断熱材、窓、ドアは通常の物件と同じ品質だ。2校舎ともカスタマイズされている。施工者の選択はコンペで行われ、モジュール式の建物で応募したのはパルマコのみだったという。町は将来の生徒数減少を予測して、同社のレンタル建築を採用した。
地震も見据えて
耐久性に優れたパルマコの建築だが、地震が起きたときはどうなのだろうか。ヨーロッパ全体では地震は少ないが、イタリアなど地震が多い地域もある。その点について同社に尋ねたところ、以下の回答を得た。
「当社の鉄骨は耐震の品質テストが行われていて、地震がある地域での使用にも適しています。地震に限らず、建物全体が建設予定地の自然の力(自然災害)に耐えるよう設計する必要があるため、もしイタリアで建設する場合には、地元の専門家を設計に起用することになります」(マーケティングコミュニケーションズ・ディレクターのアナ・エロ氏)
パルマコはスウェーデンでもレンタル建築を広めており、最近はドイツでも展開を始めた。「最適なサイズで、最適な場所に、最適な期間建てる」という同社のコンセプトは、環境対策の強化にまい進するヨーロッパ内でさらに人気が高まっていくに違いない。
[執筆者]
岩澤里美
スイス在住ジャーナリスト。上智大学で修士号取得(教育学)後、教育・心理系雑誌の編集に携わる。イギリスの大学院博士課程留学を経て2001年よりチューリヒ(ドイツ語圏)へ。共同通信の通信員として従事したのち、フリーランスで執筆を開始。スイスを中心にヨーロッパ各地での取材も続けている。得意分野は社会現象、ユニークな新ビジネス、文化で、執筆多数。数々のニュース系サイトほか、JAL国際線ファーストクラス機内誌『AGORA』、季刊『環境ビジネス』など雑誌にも寄稿。東京都認定のNPO 法人「在外ジャーナリスト協会(Global Press)」監事として、世界に住む日本人フリーランスジャーナリスト・ライターを支援している。www.satomi-iwasawa.com