最新記事
環境

サーキュラーエコノミーで経済をエコ化せよ 世界の最新循環経済のフォーラム開催

2024年5月10日(金)17時10分
岩澤里美(スイス在住ジャーナリスト)

中国もサーキュラーエコノミーに注力

newsweekjp_20240510043810.jpg

「中国の循環的変革を明らかにする」セッションで語る、エレン・マッカーサー財団北京事務所のイソン・グアン代表 photo by Alexandru Enache ©Sitra

本フォーラムには、世界最大の製造国である中国も参加した。「中国の循環的変革を明らかにする」セッションでは、中国のベストサーキュラー実践や中国の循環経済発展を促進する国際協力といったテーマの発表があり、パネルディスカッションも行われた。

エレン・マッカーサー財団北京事務所のイソン・グアン代表は、「国内では、ゼロウエイストの施策を積極的に取り入れる市が増加している。製造分野では、サーキュラーエコノミーの実践が常識となってきている。サーキュラーエコノミーを取り入れる必要性がある場合、中国はバリューチェーンを最も手頃な費用で短期間に変えることができる。また、中国はサーキュラーエコノミーの知見を発展途上国に提供している」と現状を語った。

ヨーロッパとの関係については、「中国は、インフラ向上のためにヨーロッパの先端テクノロジーや設備を必要とし、ヨーロッパは、サーキュラーエコノミーの戦略と製品を提供できるという中国の強みを必要としている。また両者は、再生エネルギーやEVバッテリーといった新しい分野で共同していくことができる。サーキュラーエコノミーはこれまでにないほど重要になっている。サーキュラーエコノミーのビジョンに向けて、一緒に取り組んでいこう」と締めくくった。

ヨーロッパのサーキュラーエコノミー 先駆的な例

Sitraは今回のフォーラムで、建物と建設、食と農業、林業、繊維および織物の分野から、サーキュラーエコノミーを実践し、生物多様性の損失に取り組むヨーロッパの優良企業30社を公表した。産業繊維の染色に多種類の有毒化学物質を使う代わりに、自然界の生物が作り出す色のDNA配列をコピーした微生物を使うことで、水の消費量を減らし汚染を軽減することを目指す企業など、興味深いものばかりだ。

日本でもサーキュラーエコノミーの優れた実践は行われている。サーキュラーエコノミーの導入により新たな雇用創出も期待できるため、日本でもさらにイノベーションが増えれば、経済の活性化に貢献するはずだ。


岩澤里美[執筆者]
岩澤里美
スイス在住ジャーナリスト。上智大学で修士号取得(教育学)後、教育・心理系雑誌の編集に携わる。イギリスの大学院博士課程留学を経て2001年よりチューリヒ(ドイツ語圏)へ。共同通信の通信員として従事したのち、フリーランスで執筆を開始。スイスを中心にヨーロッパ各地での取材も続けている。得意分野は社会現象、ユニークな新ビジネス、文化で、執筆多数。数々のニュース系サイトほか、JAL国際線ファーストクラス機内誌『AGORA』、季刊『環境ビジネス』など雑誌にも寄稿。東京都認定のNPO 法人「在外ジャーナリスト協会(Global Press)」監事として、世界に住む日本人フリーランスジャーナリスト・ライターを支援している。www.satomi-iwasawa.com


20241126issue_cover150.png
※画像をクリックすると
アマゾンに飛びます

2024年11月26日号(11月19日発売)は「超解説 トランプ2.0」特集。電光石火の閣僚人事で世界に先制パンチ。第2次トランプ政権で次に起きること。[PLUS]驚きの閣僚リスト/分野別米投資ガイド

※バックナンバーが読み放題となる定期購読はこちら


あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

トランプ氏、FDA長官に外科医マカリー氏指名 過剰

ワールド

トランプ氏、安保副補佐官に元北朝鮮担当ウォン氏を起

ワールド

トランプ氏、ウクライナ戦争終結へ特使検討、グレネル

ビジネス

米財務長官にベッセント氏、不透明感払拭で国債回復に
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:超解説 トランプ2.0
特集:超解説 トランプ2.0
2024年11月26日号(11/19発売)

電光石火の閣僚人事で世界に先制パンチ。第2次トランプ政権で次に起きること

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    寿命が延びる、3つのシンプルな習慣
  • 2
    「1年後の体力がまったく変わる」日常生活を自然に筋トレに変える7つのヒント
  • 3
    北朝鮮は、ロシアに派遣した兵士の「生還を望んでいない」の証言...「不都合な真実」見てしまった軍人の運命
  • 4
    日本人はホームレスをどう見ているのか? ルポに対す…
  • 5
    「このまま全員死ぬんだ...」巨大な部品が外されたま…
  • 6
    ロシア西部「弾薬庫」への攻撃で起きたのは、戦争が…
  • 7
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」…
  • 8
    プーチンはもう2週間行方不明!? クレムリン公式「動…
  • 9
    Netflix「打ち切り病」の闇...効率が命、ファンの熱…
  • 10
    ウクライナ軍、ロシア領内の兵器庫攻撃に「ATACMSを…
  • 1
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」に警鐘【最新研究】
  • 2
    寿命が延びる、3つのシンプルな習慣
  • 3
    自分は「純粋な韓国人」と信じていた女性が、DNA検査を受けたら...衝撃的な結果に「謎が解けた」
  • 4
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り…
  • 5
    「1年後の体力がまったく変わる」日常生活を自然に筋…
  • 6
    日本人はホームレスをどう見ているのか? ルポに対す…
  • 7
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参…
  • 8
    朝鮮戦争に従軍のアメリカ人が写した「75年前の韓国…
  • 9
    クルスク州の戦場はロシア兵の「肉挽き機」に...ロシ…
  • 10
    沖縄ではマーガリンを「バター」と呼び、味噌汁はも…
  • 1
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」に警鐘【最新研究】
  • 2
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参加で「ネットの自由」を得た兵士が見ていた動画とは?
  • 3
    寿命が延びる、3つのシンプルな習慣
  • 4
    外来種の巨大ビルマニシキヘビが、シカを捕食...大き…
  • 5
    朝鮮戦争に従軍のアメリカ人が写した「75年前の韓国…
  • 6
    自分は「純粋な韓国人」と信じていた女性が、DNA検査…
  • 7
    北朝鮮兵が味方のロシア兵に発砲して2人死亡!? ウク…
  • 8
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り…
  • 9
    足跡が見つかることさえ珍しい...「超希少」だが「大…
  • 10
    「1年後の体力がまったく変わる」日常生活を自然に筋…
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中