世界で注目集める「数十年で完成する小さな森」、考案したのは日本の植物学者だった
気候変動対策の切り札に
経済性を念頭においた人工林とは真逆の発想から生まれた小さな森作り。「植樹はその土地本来の木を主木とし、自然の法則に従うべき」という宮脇氏の考えはイギリスだけでなく、EU諸国、アフリカ、アメリカ、南米アマゾンにまで広がり、共感を呼んでいる。
植林は有望な気候変動対策の一つに挙げられている。世界経済フォーラムは2030年までに1兆本の木を植える「1t.org」プロジェクトを打ち出したが、人工林よりも炭素ストックや生物多様性の面で優るといわれる宮脇方式は、特に都市部の植林方法として支持を集めている。
「1t.org」のプロジェクトパートナーでもあり、世界に造林者ネットワークを持つプラットフォーム企業SUGiは都市の植林方法をすべて宮脇方式にこだわる。フランスやベルギーの都市部で小さな森作りを進めているアーバン・フォレスツ財団やアースウォッチ・ヨーロッパの活動も同様だ。
アースウォッチ・ヨーロッパは2023年初頭、英国に149の小さな森ができた時点でさまざまな効果を検証したモニタリングリポートをまとめた。
生物多様性や雨水浸透率、洪水リスクの低減、木の炭素吸収量の推定、ヒートアイランドの抑制効果、地域住民のリラックス効果など、複数の観点からデータを収集したのは3465人の市民ボランティアだ。
植樹してまだ日が浅く、効果の判断には継続的な調査が必要だが、リポートによると149の小さな森は2.4トンの炭素を吸収していた。これは英国民一人が1年で排出する二酸化炭素量の4分の1に相当するそうだ。
森の経過を見守る「ツリー・キーパー」のボランティアを務めるメラニー・ボイルさんは、「この森の科学的な原理が知りたくて参加している。小さな森は感動的」と同団体のサイトにコメントを寄せていた。小さな森の不思議をイギリス市民は科学的な視点と好奇心、双方を持って見守っているところだ。
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