健康長寿の一歩、年齢に負けず「長く続けるための」ウォーキング術
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短い散歩に1日数回出るなどして、座りっぱなしの時間を減らすのが大事 MOLCHANOVDMITRY/ISTOCK
<歩くことが心身の健康に効果的なのは知っているが、実際にはどれだけ歩けばいいのか? 歩き方の秘訣や歩行量の目安を運動生理学の専門家に聞く>
1日1万歩のウオーキングが健康維持の「常識」とされて久しい。
けれども、この数字はどこから来たのか。そもそも本当に正しいのか。
毎日の歩行量を増やすことで心身の健康にメリットがあるのは間違いないと、専門家は言う。
「ウオーキングの歩数を伸ばすなどして運動量が増えれば、心血管機能の改善、体重管理、メンタルヘルスや睡眠の質の向上、認知機能の強化につながる」と、英ハートフォードシャー大学のリンジー・ボトムズ准教授は語る。
「ウオーキングには、認知症のような慢性疾患や一部の癌の発症リスクを抑える効果が期待できる。2型糖尿病などの改善にも役立つ場合もある」
では、そうした恩恵にあずかるためには、一定の歩数をクリアしなければならないのか。運動と健康に関する生理学が専門のボトムズに、ウオーキングにまつわる疑問をぶつけた。
■そもそも「1万歩」の数字はどこから?
「1965年に日本の歩数計メーカー、山佐時計計器が発売した商品が由来らしい」と、ボトムズは言う。
「その商品は『万歩計』と言い、『万歩』は日本語で1万歩を意味する。これが広まり、1日に達成すべき歩行量の目標として世界中で定着したのだろう」
■1万歩では足りないって本当?
運動はどんなものであれ免疫力を高め、心の健康を改善してくれる。
ウオーキングはシンプルでどこでもできるのが、大きなメリット。
年齢を問わず手軽に生活に取り入れられて、健康増進に効果のあるエクササイズだ。
欧州予防循環器学会(EAPC)の機関誌に昨年掲載された論文によれば、1日に2337歩以上歩くことで心血管疾患による死亡リスクが減少した。
1日に3967歩では、死因を問わず全ての死亡リスクが低下した。
米国医師会報(JAMA)の神経科専門誌に2019年に発表されたアルツハイマー病に関する論文は、発症リスクの高い人も1日8900歩程度歩くことで認知機能の低下と脳萎縮を遅らせられるかもしれないと結論付けた。
一方で、健康維持のためには1日2万歩を目指すべきだとの声もある。
だが、心臓の健康に最適な効果を得るには1万歩さえ必要ないとの研究結果もあると、ボトムズは指摘する。
むしろ多くの人がチャレンジできるように、目標は低めに設定したほうがいい、というのが、ボトムズの考え方だ。
「2万歩を目指すのを止めるつもりはないが、一般的な目標はもっと低く設定したほうがいい。達成できない目標を課しても、やる気をくじくだけだ」
「歩行量が7500~8500歩を超えるあたりから死亡リスクにも心血管疾患の発症リスクにも変化が見られなくなると、複数の研究が示している。また、約4400歩のウオーキングを一定期間続けることで女性の死亡率が下がったという研究結果もある」