最新記事

保険

収入の1割以上、毎月約10万円が保険料に...... なぜ「国民健康保険」は高額なのか

2022年8月19日(金)20時20分
笹井恵里子(ジャーナリスト) *PRESIDENT Onlineからの転載
国民健康保険の保険証と診察券など

国民健康保険の保険証と診察券など *写真は記事本文と関係ありません


日本人は全員が何らかの医療保険に加入している。勤め人は勤務先の健保、75歳以上は後期高齢者医療制度、それ以外の人は「国民健康保険」(国保)となる。国保の加入率は27.1%(2020年9月末現在)。4人に1人は国保に入っているが、その保険料はきわめて高い。なぜこんなことになっているのか。自身の「年間88万円」の納付額に疑問をもったというジャーナリストの笹井恵里子氏がリポートする――。


所得の約14%が「健康保険料」で消えてしまう

国民健康保険(国保)の加入者は、今年度の「国民健康保険料(国保料)」の決定通知を受け取っただろう。今年度から新しく加入した人は、その金額の高さに驚いているのではないだろうか。

私も昨年6月半ば、自宅に届いた「国民健康保険料(以下、国保料)の決定通知書」を見て目を疑った。その額なんと年間88万円、10カ月払いで月々約8万8000円であったのだ。

国保料は前年の所得(年収より仕事にかかる経費を引いた額)に基づいて算定される。昨年の保険料がはじきだされた、一昨年の私の所得は約600万円。ちなみにその前年の所得は約450万円で、保険料は約63万円だった。150万円の所得が上がったことで翌年に25万円の保険料増額。例年、国保料が所得のおよそ14%を占めている。

これより所得が低い人は、それだけ所得があるならいいじゃないか、と思うだろうか。だが私は組織に属さないフリーランスであるため、ボーナスや退職金などは当然なく、不動産などの不労所得もなく、取材して執筆し、それを雑誌や書籍、インターネットなどで発表することで原稿料(収入)を得ている。そのため、収入を上げるには書き続けるしかなく、年に数日の休みしかとれないほど。高校生の子どもと2人暮らしなので、不測の事態に対するリスク管理も必要だ。高い保険料を払って健康保険証を手にしても、窓口負担がゼロになるわけではないから、病気や事故に遭った際の入院費や治療費も別に確保しておく必要がある。

「保険証を返したい、自由診療がいい」は認められない

もう一度、決定通知書を見た。もちろん金額が変わるわけがない。猛烈に腹が立ってきた。私も子どもも、1年間のうちそれぞれ1回ずつしか病院を受診していない。窓口での支払いは3割自己負担でたしか3000円ほどだったはず。それなら10割負担でも2人分で2万円程度だ。この国民健康保険証を返したい、と真剣に思った。

「僕も行政の窓口で『国民健康保険証を返します』と言ったことがあります」

と、自営業の知人男性が言う。彼は現在の保険料の年間限度額(およそ100万円・地域により若干異なる)を支払っている。やはり所得の1割を超えるようだ。

「1年に1、2回しか病院に行っていないのに、保険料は月に約10万円の支払いでしょう。さすがに高いですよ。僕が保険証を返したい、自由診療がいいと言うと、窓口では『日本は皆保険制度ですから、保険証を返されても困ります。相互扶助、つまり助け合いの仕組みなんです』と繰り返し言われました」

そう、日本ではすべての人が、何らかの公的医療保険に加入する「皆保険体制」のため「保険証を返す」ことができない。

reuters__20220819200358.jpg

筆者の国民健康保険料  筆者撮影

今、あなたにオススメ

関連ワード

ニュース速報

ワールド

アングル:フィリピンの「ごみゼロ」宣言、達成は非正

ワールド

イスラエル政府、ガザ停戦合意を正式承認 19日発効

ビジネス

米国株式市場=反発、トランプ氏就任控え 半導体株が

ワールド

ロシア・イラン大統領、戦略条約締結 20年協定で防
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:トランプ新政権ガイド
特集:トランプ新政権ガイド
2025年1月21日号(1/15発売)

1月20日の就任式を目前に「爆弾」を連続投下。トランプ新政権の外交・内政と日本経済への影響は?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「拷問に近いことも...」獲得賞金は10億円、最も稼いでいるプロゲーマーが語る「eスポーツのリアル」
  • 2
    【クイズ】世界で1番マイクロプラスチックを「食べている」のは、どの地域に住む人?
  • 3
    「搭乗券を見せてください」飛行機に侵入した「まさかの密航者」をCAが撮影...追い出すまでの攻防にSNS爆笑
  • 4
    轟音に次ぐ轟音...ロシア国内の化学工場を夜間に襲う…
  • 5
    【クイズ】次のうち、和製英語「ではない」のはどれ…
  • 6
    ティーバッグから有害物質が放出されている...研究者…
  • 7
    ドラマ「海に眠るダイヤモンド」で再注目...軍艦島の…
  • 8
    「ウクライナに残りたい...」捕虜となった北朝鮮兵が…
  • 9
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参…
  • 10
    雪の中、服を脱ぎ捨て、丸見えに...ブラジルの歌姫、…
  • 1
    ティーバッグから有害物質が放出されている...研究者が警告【最新研究】
  • 2
    体の筋肉量が落ちにくくなる3つの条件は?...和田秀樹医師に聞く「老けない」最強の食事法
  • 3
    睡眠時間60分の差で、脳の老化速度は2倍! カギは「最初の90分」...快眠の「7つのコツ」とは?
  • 4
    メーガン妃のNetflix新番組「ウィズ・ラブ、メーガン…
  • 5
    轟音に次ぐ轟音...ロシア国内の化学工場を夜間に襲う…
  • 6
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参…
  • 7
    「拷問に近いことも...」獲得賞金は10億円、最も稼い…
  • 8
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 9
    【クイズ】世界で1番マイクロプラスチックを「食べて…
  • 10
    ドラマ「海に眠るダイヤモンド」で再注目...軍艦島の…
  • 1
    ティーバッグから有害物質が放出されている...研究者が警告【最新研究】
  • 2
    大腸がんの原因になる食品とは?...がん治療に革命をもたらす可能性も【最新研究】
  • 3
    体の筋肉量が落ちにくくなる3つの条件は?...和田秀樹医師に聞く「老けない」最強の食事法
  • 4
    夜空を切り裂いた「爆発の閃光」...「ロシア北方艦隊…
  • 5
    インスタント食品が招く「静かな健康危機」...研究が…
  • 6
    ロシア軍は戦死した北朝鮮兵の「顔を焼いている」──…
  • 7
    TBS日曜劇場が描かなかった坑夫生活...東京ドーム1.3…
  • 8
    「涙止まらん...」トリミングの結果、何の動物か分か…
  • 9
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 10
    「戦死証明書」を渡され...ロシアで戦死した北朝鮮兵…
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中