理想の子供像を押し付けず、豊かな個性を尊重して「生きやすさ」を育む意味
Cultivating Individuality
引っ込み思案な子に対しては、お遊戯会の練習を普通の子は10 回やるところを100回一緒にやってみるなど、時間をかけて段階的に自信を持たせることが大切になると、佐藤は指摘する。
レジリエンスを高める
実際に子育てをしていると、自分がやっていることが本当にわが子のためになっているか、不安になる親も多いだろう。そんなときは主治医を持つような感覚で、育児相談を気軽にできる人を持つことが大切だと青木は考えている。
そこで活用できるのが保育者(保育士や幼稚園教師の総称)だ。彼らは日々子供たちを見ながら自己点検し評価し、育成計画を立てているので、親とは違った視点を持っており、プロとしての適切なアドバイスができる。
このときに注意するのは、「お母さん自身が話していてしっくりくる人を選ぶこと」だと、青木は指摘する。「そういう人と定期的に話すことは、自分とわが子の人生を豊かにするマネジメントの1つともいえる」
このように、親がわが子を中心に据えた育児をすることは、その子のレジリエンス(困難な状況においてもしなやかに生き抜く力)を高めることにもつながる。公認心理師・臨床心理士で埼玉学園大学大学院心理学研究科長の小玉正博教授によると、レジリエンスとは2010年の東日本大震災以降、広く知られるようになった言葉で、変化の激4しいこれからの世界を生き抜くためにも必要な資質の1つだと言う。「乳児はこの人がいれば自分は大丈夫という愛着を養育者との間に育むことで、自分はここにいていいという自己肯定感の土台をつくり上げていく。自分は大丈夫という感覚は、逆境に陥ったときに心が折れずにその場を乗り切る強さにつながる」
面白いことに、この愛着は断絶と修復を繰り返すことで強くなると小玉は言う。「子供が離乳食をぐちゃぐちゃにして遊んでいたら、親は『そんなことしちゃ駄目』と叱り、断絶が起こる。けれどその後、抱っこしたり一緒に遊んだりすることが修復になる。こうした繰り返しで、親子の絆は深まり、子供自身は逆境の中でもしなやかに生きるすべを身に着けていく」
親が理想とする子供像を押し付けるのではなく、その子の個性を尊重して子育てをすることは、その子らしく幸せな人生を歩むための大きなエールになるはずだ。
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