最新記事

0歳からの教育

理想の子供像を押し付けず、豊かな個性を尊重して「生きやすさ」を育む意味

Cultivating Individuality

2022年3月3日(木)15時55分
岡田光津子(ライター)

引っ込み思案な子に対しては、お遊戯会の練習を普通の子は10 回やるところを100回一緒にやってみるなど、時間をかけて段階的に自信を持たせることが大切になると、佐藤は指摘する。

レジリエンスを高める

実際に子育てをしていると、自分がやっていることが本当にわが子のためになっているか、不安になる親も多いだろう。そんなときは主治医を持つような感覚で、育児相談を気軽にできる人を持つことが大切だと青木は考えている。

そこで活用できるのが保育者(保育士や幼稚園教師の総称)だ。彼らは日々子供たちを見ながら自己点検し評価し、育成計画を立てているので、親とは違った視点を持っており、プロとしての適切なアドバイスができる。

このときに注意するのは、「お母さん自身が話していてしっくりくる人を選ぶこと」だと、青木は指摘する。「そういう人と定期的に話すことは、自分とわが子の人生を豊かにするマネジメントの1つともいえる」

このように、親がわが子を中心に据えた育児をすることは、その子のレジリエンス(困難な状況においてもしなやかに生き抜く力)を高めることにもつながる。公認心理師・臨床心理士で埼玉学園大学大学院心理学研究科長の小玉正博教授によると、レジリエンスとは2010年の東日本大震災以降、広く知られるようになった言葉で、変化の激4しいこれからの世界を生き抜くためにも必要な資質の1つだと言う。「乳児はこの人がいれば自分は大丈夫という愛着を養育者との間に育むことで、自分はここにいていいという自己肯定感の土台をつくり上げていく。自分は大丈夫という感覚は、逆境に陥ったときに心が折れずにその場を乗り切る強さにつながる」

面白いことに、この愛着は断絶と修復を繰り返すことで強くなると小玉は言う。「子供が離乳食をぐちゃぐちゃにして遊んでいたら、親は『そんなことしちゃ駄目』と叱り、断絶が起こる。けれどその後、抱っこしたり一緒に遊んだりすることが修復になる。こうした繰り返しで、親子の絆は深まり、子供自身は逆境の中でもしなやかに生きるすべを身に着けていく」

親が理想とする子供像を押し付けるのではなく、その子の個性を尊重して子育てをすることは、その子らしく幸せな人生を歩むための大きなエールになるはずだ。

0sai_2022_mook_cover150.jpg
※画像をクリックすると
アマゾンに飛びます

ニューズウィーク日本版SPECIAL ISSUE「0歳からの教育2022」が好評発売中。3歳までにすべきこと、できること。発達のメカニズム、心と体、能力の伸ばし方を科学で読み解きます

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

訂正-台湾、米関税対応で27億米ドルの支援策 貿易

ビジネス

米雇用統計、3月雇用者数22.8万人増で予想大幅に

ビジネス

中国が報復措置、全ての米国製品に34%の追加関税 

ビジネス

世界食料価格、3月前年比+6.9% 植物油が大幅上
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:引きこもるアメリカ
特集:引きこもるアメリカ
2025年4月 8日号(4/ 1発売)

トランプ外交で見捨てられ、ロシアの攻撃リスクにさらされるヨーロッパは日本にとって他人事なのか?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    ひとりで海にいた犬...首輪に書かれた「ひと言」に世界が感動
  • 2
    5万年以上も前の人類最古の「物語の絵」...何が描かれていた?
  • 3
    「最後の1杯」は何時までならOKか?...コーヒーと睡眠の「正しい関係」【最新研究】
  • 4
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる…
  • 5
    【クイズ】日本の輸出品で2番目に多いものは何?
  • 6
    アメリカで「最古の銃」発見...いったい誰が何のため…
  • 7
    得意げに発表した相互関税はトランプのオウンゴール…
  • 8
    テスラが陥った深刻な販売不振...積極プロモも空振り…
  • 9
    大使館にも門前払いされ、一時は物乞いに...ロシア軍…
  • 10
    「ネイティブ並み」は目指す必要なし? グローバル…
  • 1
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?
  • 2
    自らの醜悪さを晒すだけ...ジブリ風AIイラストに「大はしゃぎ」する人に共通する点とは?
  • 3
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる唯一の方法
  • 4
    ロシア空軍基地へのドローン攻撃で、ウクライナが「…
  • 5
    ガムから有害物質が体内に取り込まれている...研究者…
  • 6
    8日の予定が286日間に...「長すぎた宇宙旅行」から2…
  • 7
    磯遊びでは「注意が必要」...6歳の少年が「思わぬ生…
  • 8
    あまりにも似てる...『インディ・ジョーンズ』の舞台…
  • 9
    突然の痛風、原因は「贅沢」とは無縁の生活だった...…
  • 10
    なぜ「猛毒の魚」を大量に...アメリカ先住民がトゲの…
  • 1
    中国戦闘機が「ほぼ垂直に墜落」する衝撃の瞬間...大爆発する機体の「背後」に映っていたのは?
  • 2
    「さようなら、テスラ...」オーナーが次々に「売り飛ばす」理由とは?
  • 3
    「一夜にして死の川に」 ザンビアで、中国所有の鉱山ダムから有毒の水が流出...惨状伝える映像
  • 4
    テスラ失墜...再販価値暴落、下取り拒否...もはやス…
  • 5
    「今まで食べた中で1番おいしいステーキ...」ドジャ…
  • 6
    市販薬が一部の「がんの転移」を防ぐ可能性【最新研…
  • 7
    テスラ販売急減の衝撃...国別に見た「最も苦戦してい…
  • 8
    「テスラ時代」の崩壊...欧州でシェア壊滅、アジアで…
  • 9
    テスラの没落が止まらない...株価は暴落、業績も行き…
  • 10
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中