「奨学金880万円」借りて大学進学した彼女が東京で見つけた仕事とは
東京の大学に行くため、奨学金880万円を借りた女性。結果、自分でも思いもよらなかった仕事につくことに…… *写真はイメージです monzenmachi - iStockphoto
学歴社会において「大卒」という肩書きが必須となっている以上、学生目線では「借りないわけにもいかない」という現実もある。「そもそも大学の授業料が高くなっている」「学費を担ってきた親側におしよせる、可処分所得の減少」など、親たちの経済事情も刻々と変わっている。
そこで本連載では、奨学金を実際に借りた当事者たちに取材。「借りたことで、価値観や生き方にどんな変化が起きたのか?」。彼らのライフストーリーを追っていく。
今回、話を聞くのは山田志保さん(24歳・仮名)。東北地方出身で、関東圏の4年制大学を卒業後、出版関係の企業に就職して3年目になる女性だ。
借りた奨学金は、第1種(無利子)が307万2000円、第2種(有利子)が576万円で、合計して883万2000円......およそ900万円という金額だ。その結果、月々の返済額は3万6977円。これが20年間続くという。
「東京の大学に行こうと思って親に伝えたら、『生活費と学費は自分で出してね』と言われたのが、奨学金を借りたきっかけです。家の財政事情はなんとなく把握していたので、『でしょうね』というのが、正直な感想でしたね。両親はともに高卒で、大学がどんな場所か知らなかったのも影響していたと思います」
かつては、漁業で栄えたが、今はすっかり衰退してしまっているという志保さんの故郷。家族構成は両親と兄で、兄も中学を卒業後すぐに働き始めて、現在も実家で暮らしているという。3人とも堅い仕事をしており、比較的保守的な考えの人たちのようだ。
また、高校の教師たちも、同じように保守的で、志保さんの肌には合わなかった。
「私が通っていた高校は、地方によくある『自称』進学校でした。田舎の公立進学校ってだいたいそうだと思うんですけど、地元国公立至上主義で、そこに進むことをめちゃくちゃ勧められるんです。1年生の時にはわざわざ学年全員でバスに乗って見学しにいったりしていましたね。そんなだから、私も1年生ぐらいまでは地元の国公立を目指してたんですが、2年生の時に『やっぱり都会の私立に行きたい』と思うようになって」
上記のような理由で、東京の私大への進学を決意した志保さん。となると、気になるのは両親が負担してくれる割合だが、どうだったのだろうか。
「家賃・生活費・学費のうち、親が出してくれたのは、学費の半分でした。一人暮らししたことがなかったので、どれくらいのお金が毎月必要なのか、いまいち想像できず、無利子の第1種、有利子の第2種ともに満額を借りることにしました。今思えば、もっと少なくしておけばよかったんですけど......」
この時点で、その後始まる返済生活に暗雲が立ち込めている印象だが、焦らず、時系列に沿って聞いていこう。
東京進学も「落とし穴」が......
多額の奨学金を借りてまでも夢見た、東京でのキャンパスライフ。希望した大学には受かったが、落とし穴があった。そのキャンパスがあるのは都内ではなく、神奈川だったのだ。