最新記事

日本社会

ニッポンのリタイヤしたオジサンたちが次々と感染する「見えない病」の正体

2022年1月25日(火)12時25分
荒川和久(コラムニスト・独身研究家) *PRESIDENT Onlineからの転載

男性は50代から急激に「友達ゼロ」が増える

会社の人間関係は、会社の内集団だからこその関係性にすぎず、会社を辞めれば、外集団の無関係な人間となります。以前勤めていた会社だからといって、IDカードもないのに入所することはできませんし、連絡をとったところで相手も迷惑するでしょう。何十年も勤め上げたところで、退職した瞬間に、それまでの人間関係はその瞬間に消滅するのです。

ここまで読んで、「いやいや、俺は大丈夫。俺には会社以外の友達もたくさんいるから」と思っている今は現役の男性もいるかもしれません。しかし、その友達は、あなたが会社を辞めて、何の肩書もない状態になっても付き合ってくれるでしょうか? そもそもその人と知り合ったのは仕事絡みではなかったですか? 連絡をとってくる時は何かしら仕事の頼み事があったからではないですか? そもそも、知り合いと友達は違います。フェイスブックで、登録上友達数が何千人いたとしても、それは単に「いいね」をくれるだけの関係でしかありません。

年代別に「友達がいない割合」を調査したものがあります。

男性は、50代から急激に「友達ゼロ」が増えていきます。70歳以上でさらに友達の数が減るのは、数少ない友達自体が死んでしまうということもあるからですが、それでも男性は、加齢と所属の有無とともに、友達がゼロになっていくのです。

【図表1】友達が一人もいない割合

【図表1】友達が一人もいない割合

日本の高齢男性特有の「妻唯一依存症」

要するに、ほとんどの男性には、仕事を辞めた後も付き合いが続く人間関係はほぼいません。深刻なのは、現役の時に友達がいると錯覚している人ほど、仕事を辞めた途端に「俺は友達がいなかったんだ......」と突然思い知らされ、大きな絶望を感じてしまうことです。

身も蓋もない言い方をすれば、退職後の高齢男性の末路は、友達もなく、趣味もなく、生きがいもなく、やることもなく、さりとて何かを始めようとする意欲もなく、ただ毎日テレビを見て過ごすだけの抜け殻となります。

その最大の被害者が配偶者(妻)です。今まで会社だけに依存してきた夫が、退職後は今度は妻に依存するようになるからです。私はそれを高齢男性特有の「妻唯一依存症」と名付けています。

そうなってしまった夫は、分かりやすくいえば幼児と一緒です。妻の買い物についていこうとするし、やたらと構ってもらおうとするし、ちょっとでも相手にしないと不機嫌になって怒り出したりします。唯一の依存先である妻に見捨てられることを極端に恐れるからです。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

アングル:もう賄賂は払わない、アサド政権崩壊で夢と

ワールド

アングル:政治的権利に目覚めるアフリカの若者、デジ

ワールド

尹大統領の逮捕状発付、韓国地裁 本格捜査へ

ワールド

アングル:フィリピンの「ごみゼロ」宣言、達成は非正
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:トランプ新政権ガイド
特集:トランプ新政権ガイド
2025年1月21日号(1/15発売)

1月20日の就任式を目前に「爆弾」を連続投下。トランプ新政権の外交・内政と日本経済への影響は?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「拷問に近いことも...」獲得賞金は10億円、最も稼いでいるプロゲーマーが語る「eスポーツのリアル」
  • 2
    【クイズ】世界で1番マイクロプラスチックを「食べている」のは、どの地域に住む人?
  • 3
    「搭乗券を見せてください」飛行機に侵入した「まさかの密航者」をCAが撮影...追い出すまでの攻防にSNS爆笑
  • 4
    感染症に強い食事法とは?...食物繊維と腸の関係が明…
  • 5
    女性クリエイター「1日に100人と寝る」チャレンジが…
  • 6
    【クイズ】次のうち、和製英語「ではない」のはどれ…
  • 7
    フランス、ドイツ、韓国、イギリス......世界の政治…
  • 8
    失礼すぎる!「1人ディズニー」を楽しむ男性に、女性…
  • 9
    オレンジの閃光が夜空一面を照らす瞬間...ロシア西部…
  • 10
    本当に残念...『イカゲーム』シーズン2に「出てこな…
  • 1
    ティーバッグから有害物質が放出されている...研究者が警告【最新研究】
  • 2
    体の筋肉量が落ちにくくなる3つの条件は?...和田秀樹医師に聞く「老けない」最強の食事法
  • 3
    睡眠時間60分の差で、脳の老化速度は2倍! カギは「最初の90分」...快眠の「7つのコツ」とは?
  • 4
    「拷問に近いことも...」獲得賞金は10億円、最も稼い…
  • 5
    メーガン妃のNetflix新番組「ウィズ・ラブ、メーガン…
  • 6
    轟音に次ぐ轟音...ロシア国内の化学工場を夜間に襲う…
  • 7
    【クイズ】世界で1番マイクロプラスチックを「食べて…
  • 8
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参…
  • 9
    ドラマ「海に眠るダイヤモンド」で再注目...軍艦島の…
  • 10
    【クイズ】次のうち、和製英語「ではない」のはどれ…
  • 1
    ティーバッグから有害物質が放出されている...研究者が警告【最新研究】
  • 2
    大腸がんの原因になる食品とは?...がん治療に革命をもたらす可能性も【最新研究】
  • 3
    体の筋肉量が落ちにくくなる3つの条件は?...和田秀樹医師に聞く「老けない」最強の食事法
  • 4
    夜空を切り裂いた「爆発の閃光」...「ロシア北方艦隊…
  • 5
    インスタント食品が招く「静かな健康危機」...研究が…
  • 6
    TBS日曜劇場が描かなかった坑夫生活...東京ドーム1.3…
  • 7
    「涙止まらん...」トリミングの結果、何の動物か分か…
  • 8
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 9
    「戦死証明書」を渡され...ロシアで戦死した北朝鮮兵…
  • 10
    「腹の底から笑った!」ママの「アダルト」なクリス…
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中